「創造と変革の志士」の旅立ち〜グロービスの卒業式の風景 

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今年、グロービスにとっては4回目の卒業式を迎えた。黒いアカデミック・ガウンに身を包み、卒業生が颯爽と入場してくる姿を見ると、僕は毎回目頭が熱くなってしまう。

この日は、二年間強にわたり、全力でぶつかり育てあげてきた「創造と変革の志士」たちの旅立ちの日なのである。

今回は、4回目ではあるが、グロービス経営大学院として、初めてのMBA生を送り出すことになった。なぜならば、グロービスは、最初は非学位のオリジナルMBAプログラムである、GDBA(Graduate Diploma in Business Administration)としてスタートしたが、その後、文部科学省から認可を得て、2006年4月より経営大学院に進化したからである。それから二年間の月日が経った事になる。

今まではGDBA生を送りだしていたが、今回初めてGDBA生に加えて、MBAの学位を受ける卒業生を送りだすことになったのである。ただし、グロービスでは、GDBA生であろうが、MBA生であろうが、同じプログラムを受講しているので区別をつけていない。僕らは、双方を称して、「GMBA生」と呼んでいる。

グロービスの卒業式は、シンプルであるが、とても熱気にあふれている。式次第は、大きく分けて二つに分かれている。最初が、学長と来賓の式辞・祝辞である。これは、20-30分で終了する。そして次が、修了証書の授与と卒業生代表の挨拶である。これが一時間半以上かかるのである。

一番長く時間をとるのが、一人一人に修了証書を授与した後に、「決意表明」と称して、各自がこれから生きていく上での誓いを3-5分程度で述べる部分である。

弊社の企業研修部門のヘッドの鎌田英治のメモには、以下の言葉が記されていた。

「本日、GMBAの卒業式(東京)に参加した。34名のGMBA生の晴れ舞台は、とても素晴らしかった。

「自分の為でなく、社会の為、大儀の為に」
「21世紀を切り拓く」
「他人に良い影響を与える存在になる」
「動かないことは不作為。大袈裟に言えば、『坂の上の雲』の秋山氏の様に、自分が1日サボルと日本が1日遅れる、という意識で臨む」、など。

異口同音に聞けたのは、自らの強い決意とともに、家族のサポートへの心からの感謝の想いである。言葉を詰まらせるスピーチに触れると、思わずもらい涙で目頭が熱くなる。

全体を通じて感じたことは、卒業生の目線は明らかに社会に向いているということである。利他の考え方が、自らを利することに明らかに勝っている印象を持った。つまり、社会に対する貢献の心が前面に出ているのである。

このコミュニティには、グロービス経営大学院の建学の精神である「創造と変革の志士を輩出する」という想いが、確実にシェアされていると感じた。

卒業生は二年強に亘る多くの時間投資をした。人的ネットワークの中で得られる絆と切磋琢磨、講師陣とのガチンコ議論、あらゆる機会を通じてシャワーの様に浴びせられる知識と知恵。そして志。

その結果がこの卒業式の言葉になっている。卒業式という特別な場での決意表明だが、彼らの凝縮された実感が結晶化され、言葉として湧き出ている印象を持った。

来賓の野田一夫先生も、「簡潔、明瞭で個性的な宣誓だった」と褒めていらしたが全く同感である。

数多く聞かれた、代表的な“生の声”を、ご紹介する。
 
■先ず、自己認識
「自分と人に真剣に向き合えた」
「自らを深く知ることが出来た」
「力不足を痛感した」
「自らにポジティブになれた」
  
■そして、自己変容(意識面の変容)
「知恵と志を学び、自分の中に革命が起きた」
「自信のない自分が、大きく変わった」
「やれば伸びる(変化する)ことがわかった」
「現状維持をやめた」
「頭と体を一生鍛え続ける、一生挑戦だと認識した」

 

■更に、「可能性を信じる」 強いメンタリティを獲得
「目標に挑戦する心の障壁はなくなった」
「必ずやれると信じている」
「色々なマインドを教わった」
「気の持ちよう、全力でやる姿勢。スキル以上にメンタリティが大きかった」

 

■そして旅立ちには「決意」をもって・・・
「スパーリングは十分やった、これからが実践」
「千里の道も一歩から」
「5、10年後を見ていてください」

 

■最後に聞かせてもらえたコメント
「漠然と出来たらいいなぁ、と考えていたことを、
やろうという決意に変えさせてくれたのがグロービスでした」

 

以上に象徴されるように、多くの卒業生は自分を信じることから生まれる「自信」
志をたてるという「決意」を得たのだと思う」。

 

鎌田氏のメモにあるとおり、僕らは、「創造と変革の志士を輩出する」と称して、能力面ばかりでなく、マインド面、つまり人間力の育成に力を入れてきた。なぜならば、たとえ知識・知恵があっても、人間的魅力が無いと、人が集まってくれない。さらに、強い志・使命感を持っていないと、経営の現場で困難に陥ったときには、宝の持ち腐れとなり、困難や試練を克服できないからである。

グロービスは、「経営学を教える大学」ばかりではなくて、「経営者を育成する私塾」なのである。経営者を育成するためには、当然、リーダーとしての資質を叩き込む必要があった。

では、「果たして、どうやって人間力を育てるのか?」。

知識・知恵を与えられても、人間力を育てるのは簡単ではない。この問いが、大きな難題として目の前に立ちふさがるのである。

「人間力とは。人間の器とは、そもそも育てられるのだろうか」。

さまざまな試行錯誤を経て、辿り着いた場所が、幕末の私塾である。「数多くの勤皇の志士を輩出した私塾の教え方には、人間力を育成するノウハウがあるのでは。その私塾のやり方をベンチマークすると、育成する方法論が見えてくるのでは」、と思い、吉田松陰の松下村塾の手法を徹底的に学ぶことにした。

その手法とは、「講学」スタイルと呼ばれるもので、先生と生徒が本を読み、徹底的に議論をする手法である。グロービスでは、これを「読書会形式」と呼んでおり、「経営道場」という科目の中で取り入れている。そこで選ぶ本は、『真説「陽明学」入門』(林田明大著)を筆頭に、『人を動かす』(デール・カーネギー著)など、人間的な器を広げるのには、格好の本となっている。

更には、僕が教えている必修科目である、「企業家リーダーシップ」の科目では、内村鑑三著の『代表的日本人』をもとに、西郷隆盛、二宮尊徳、上杉鷹山、中江藤樹について意見交換する。そして、受講生には、最後のクラスで、「自分の使命」と称して、自らの今後の生きていく方向性を発表してもらったりしているのである。ちょうど、僕が『吾人の任務』を執筆して、大学院を創設したように、受講生には、「自分の使命」を見つけてもらい、その使命にしたがって生きて欲しいと思っている。到底、二年間強の教育で使命を見つけることはできないかもしれないが、考えるきっかけを与えられたら、幸いに思っている。

卒業式に、その教育の成果が、能力面ばかりでなく、人間面で成長した卒業生の姿として、現出されるのである。

その姿に、僕は毎回感動させられる。

毎回卒業式には、僕は学長として、以下の言葉を投げかけて締めくくっている。

「皆さんが今後何をすべきかを『自分の使命』として発表してもらったと思います。ぜひ、自らの使命とは何かを考え続けてください。金銭欲、名誉欲、権力欲などの欲望をそぎ落とし、自らの使命を見つけ出し、それに向かってまい進して欲しいと思います。

その上で、高い倫理観を持ち、世界観・歴史観を兼ね備えて、哲学や宗教を通しての人生観をもとにまっすぐに生きていってください。

それらの志士の5カン(世界観、歴史観、人生観、使命感、倫理観)を持ち、グロービスで学んだ創造と変革の方法論と結びつけば、『創造と変革の志士』として、社会に新たな価値創造を行い、ダイナミズムを生み出しているものと確信しています。

皆さんとグロービスでお会いできました縁に感謝しつつ、卒業式における送る言葉と代えさせて頂きます

2008年6月吉日
グロービス経営大学院学長
堀義人

京都大学工学部卒、ハーバード大学経営大学院修士課程修了(MBA)。住友商事株式会社を経て、1992年株式会社グロービス設立。1996年グロービス・キャピタル、1999年 エイパックス・グロービス・パートナーズ(現グロービス・キャピタル・パートナーズ)設立。2006年4月、グロービス経営大学院を開学。学長に就任する。若手起業家が集うYEO(Young Entrepreneur's Organization 現EO)日本初代会長、YEOアジア初代代表、世界経済フォーラム(WEF)が選んだNew Asian Leaders日本代表、米国ハーバード大学経営大学院アルムナイ・ボード(卒業生理事)等を歴任。現在、経済同友会幹事等を務める。2008年に日本版ダボス会議である「G1サミット」を創設。2011年3月大震災後に、復興支援プロジェクトKIBOWを立ち上げ、翌年一般財団法人KIBOWを組成し、理事長を務める。2013年6月より公益財団法人日本棋院理事。いばらき大使、水戸大使。著書に、『創造と変革の志士たちへ』(PHP研究所)、『吾人(ごじん)の任務』 (東洋経済新報社)、『人生の座標軸』(講談社)等がある。

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