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インドへの精神修行の旅〜第2章「疑念」

投稿日:2010/02/12更新日:2019/08/21

最初に抱いた期待感は、スワミジのスピーチの合間に、少しずつ疑念に変っていった。素晴らしい方なのだが、僕が欲している内容とは、違っているのである。基本的には、心技体の規律を重んじ、その中で、技(知性)に重きを置いているのだ。既存の社会に対する、厳しい批判と過度な一般化が繰り返し行われた。それらの内容も口調も精神的なリーダーにふさわしようには思えなかった。愛情の定義は、数式で表されていた。愛情=執着―独善性だという。幸福も数式であった。僕は、愛とか幸福を数式では言い表せないものだと思っているのだ。

その後、Q& Aがあったのだが、とても初歩的な哲学の話題であった。質問に対する、言葉の定義の議論が多くを占め、本質的な質問に対する答えは、二の次になっていた。

「これは、僕が欲しているとは違うのでは」と思い始めた。

Q& Aセッションの後、夕食時に、僕の不満をボストンから来ていたカップルにぶつけることとした。彼らも同様の意見であった(ちなみに、彼は、「2009年を忘れたい」と言って参加してきた。昨年は、売上がピークの1/4に落ち込み、今でもまだ半分なのだという)。

翌朝、ヨガのクラスを受けた後に、スポーツの時間があった。僕は、軽くジョギングをした後に、バスケットをした。

Twitter「アシュラムで朝を迎えた。既に下痢状態である。あれだけ水の摂取には気を使ったのに。。朝6時20分からヨガをして、7時からジョギング。バスケで本気になり、ほぼチームの半分の得点をゲットするも、膝が悲鳴をあげたので、途中退場。やはり、コンクリートのコートでのバスケは、無理があったか。。」

バスケの後に、シャワーを浴びて、朝食をスキップして、メールをチェックする。日本との時差は、3時間30分なので、現地時間は朝8時であっても、もう既に東京は午前11時半となっているのだ。

朝9時15分から、英文学の朗読の時間である。この朗読は、スワミジの娘さん(とは言っても、スワミジが82歳なので、50歳を超えていると思われる)の役割であった。

「Even this shall pass away」という誌の朗読をして、諸行無常の境地を教えるのである。次は、シェークスピアの「ハムレット」である。一回疑念を持ち始めると、全てがネガティブに見えてくる。「どうして、貸し借りをしてはいけないのか」、が参加者の間では理解できないでいた。

朝11時から「Work Time Equation」というセッションが始まった。ここでは、知性と感情の問題が以下のとおりに定義されていた。知性が100%あるのが、一番良い状態である。もしも、感情が25%あると「感情的」になり、感情が50%だと「自己中心的」になる。感情が75%になると「ヒステリア」になり、100%になると「狂人」になるのだ、という。僕は、この考えにも同意できなかった。僕は、知性(Intellect)を働かせなくても、感情(Mind)の赴くままに100%行動する、「矩を超えず」の境地が理想だと思っているからだ。

そのようにして、いくつかの見解の不一致が重なり、全てが疑念に変っていくのである。

また、「時間管理は、セルフマネジメントである。セルフマネジメントは、知性(Intellect)が、感情(Mind)をコントロールすることによってもたらされる」、と説明を受けた。僕は、この説明にも納得できなかった。そこで、全体のQ& Aセッションで、質問をすることにした。

「セルフマネジメントのためには、知性による感情のコントロールも重要だが、その前にもっと重要なのが、自分自身を知ることではないか。自らの使命を認識した上で、そのベクトルに向かうために、知性により感情をコントロールするのではないか」、と。スワミジは、僕に、「そもそも自分自身とは何か」と逆に質問をされた。僕なりの見解を述べたあとに、「僕の質問にも是非とも答えて欲しい」と主張した。彼の、答えは、「あなたの言うとおりだ」であった。ただ、「今は、ビジネスパーソンに対して説明をしているので、基礎から始まり、順を踏みながら、教えているのである」、との説明を受けた。

僕は、自分の見解が間違っていないことにホッとしながらも、一方では、「基礎から教えているのであれば、僕が期待しているものは、このプログラムでは得られないのではないか?」などと考え始めた。

疑念を持ち始めると、今度は全てがネガティブに見えてくるのである。スタッフ(卒業生)や学生は、皆、洗脳されているのではないか。なぜ全てのクラスが、スワミジからのレクチャーなのであろうか。もっと様々な講師がいて、違う視点から学ぶ方がいいのでは99.5%の人が就職をしないのは、アカデミーの教育方針が、社会復帰できないようにするようにできているからではないのか。高級車があるのも、理解不能であった。簡素で倹約的な生活とは、逆行するのではないか。仕舞いには、ユニフォームもオウム真理教信者の着ていたものと重なり、スワミジは教祖に見え、このアカデミーが、「サティアン」ではないかと思い始めるのだ。だから、3年間は誰も自宅に帰さないのではないか、などなど考え始めるのだ。

夕方のグループディスカッションで、僕が、質問したいことをプロポーズした。その後の全体ディスカッションで、スワミジがグループから出てくる質問に答えてくれる形式になっているからだ。しかし、どこかで行き違いがあって、僕の質問が読まれなかったのだ。「都合の悪い質問は、隠しているのでは」との当初の疑念が、確信に変り、ここで、不覚にも完全に切れてしまったのだ。その場で、早々とこの「サティアン」から脱出することを決め、フライトも車の手配も、ムンバイの友達と会うアポも、早めることにしたのだ。東京とも連絡をとりあい、旅行代理店にもメールを送り、「脱出計画」を実行することにしたのだ。

そこで、僕の不満を察知したのか、YPOで企画しているウォルター氏が、夕食時に僕のところに来て、「スワミジとプライベートな時間をとってあげるけど、どう?」と聞いてきてくれた。

僕は、そのときには、どっちでもいい気分になっていたので、「どちらでもいいよ」と曖昧に伝えた。夕食が終わる前に、ウォルター氏が再度僕のところに来て、「スワミジと朝5時にアポを入れたから是非会ってみたら」と言われた。僕は、せっかくの機会だから、大いに学ばせてもらおうという気持ちで、その夜は早めにアカデミーの寮の硬いベッドに横になった。

 

2010年2月10日
成田に向かう機内にて執筆
堀義人

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