郵政法案否決・衆院解散-小泉純一郎というリーダー 

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「久しぶりにスカっとした」、というのが、今回の解散劇に対する僕の率直な感想である。

実に、鮮やかだった。小泉首相は、参議院で否決されるや否や、閣議を招集。解散詔書にサインすることを拒んだ4名の閣僚を個室に呼び、「引き続き大臣としての職務をまっとうして欲しい」、と個別に説得していった。最後まで反対し続ける人がいたので、その大臣を罷免して自ら兼任した。

その後、公明党との党首会談、そして自民党役員会。その間、天皇陛下から承認をもらい、夜7時から衆議院で解散。夜8時30分から記者会見へ。小泉首相は、記者会見で改革への強い意志を示して、以下のように述べていた。

国会の結論が郵政民営化必要無いという判断を下された。私は本当に国民の皆さんがこの郵政民営化必要無いのか?国民の皆さんに聞いてみたいと思います。云わば今回の解散は郵政解散であります。郵政民営化に賛成してくれるのか、反対するのか、これをハッキリと国民の皆様に問いたいと思います」。

「私は、4年前の自民党総裁選挙において、自民党を変える、変わらなければぶっ壊すと言ったんです。私は4年前の自民党の総裁選挙に出たときからこの民営化の主張を展開してきました。自由民主党は郵政民営化に賛成する候補者しか公認しません。」

「この郵政民営化法案の否決は、小泉不信任である、小泉内閣の進めていた構造改革に対する不信任だと受け止めるということをはっきり申し上げてきました」。

「自民党と公明党が国民の審判によって過半数の議席を獲得することができなったら、私は退陣します」。

三閣僚との個別交渉ではこうも言い放ったという。「解散は自民党の抵抗勢力をぶっつぶすチャンスだ。必ず勝てる。これを逃す手はない」。 あっぱれ!の一言だ。タイミングを逃さないスピード感、決断力、リーダーシップ、信念、伝える力、そして一貫性。全てが鮮やかとしか言いようがない。これこそがリーダーだ、という見本だったと思う。

マスコミの論調には、「小泉首相の政治手法が良くない。強引すぎる」というものが散見する。これは、リーダーシップというものを理解していないと思う。リーダーは、自らの理念を伝え、ビジョンを提示して、引っ張っていくものである。多くの方に耳を傾けるけど、最後は正当なプロセスで選ばれたリーダーが決断し、行動するものである。それについていく人が残り、ついていけない人は辞めていくのである。そして、辞めていった人の補充に、さらに良い人材を当てればいいのだ。

今回の解散、非公認というのは、そういう抵抗勢力を排除する絶好の機会だったのである。

ぼくも、自らの組織で経験したことがある。何でも反対する抵抗勢力がいたのだ。会議の場では感情的になったり、夜の場では、部下を引き連れて愚痴や不満をぶちまける。当然、社内の雰囲気は最悪となり、打つべき手も打ちにくい状況になったことがあった。ある時期にその「抵抗勢力」を一掃することを決断し、実行した。そのプロセスは、痛みが伴うものだ。社内にも動揺が走ったし、当然外部からも「大丈夫か?」という問い合わせを受けたりした。ぼくは、その間海外を含めて、キチンと説明して回った。

説明責任を果たしながらも、僕は改革を断行した。その後は、新たにビジョン・理念に共鳴する人間のみを採用した。今や明確なビジョン、理念のもと、風とおしが良く前向きな組織が、構築されている。外部の方々を含め、皆ハッピーである。

リーダーたるもの、ある時期には、決断して実行しなければならないのだ。それがリーダーの役割である。今回の郵政解散では、小泉首相は、それをしっかりと実行したのである。鮮やかであった。見ていて本当にスカッとした。

よくリーダーシップの類型に、「調整型リーダー」と「ビジョン型リーダー」がいるという。僕は調整型リーダーは、今のようなスピードが早く、改革を必要とする時代には必要ないのでは、と思う。今の時代は、明確なビジョンを提示して、常に一貫した姿勢で臨み、シンプルにコンパクトに組織をまとめ、わかりやすい言葉で説明する。そして、決断して、前に進める。

抵抗勢力や感情論を持った人々に耳を傾けながらも、ビジョンと理念とで押し切る。それでも抵抗する人は、外に出てもらい、ノンストップで前に進める。そういうリーダーが必要とされている時代だと思う。

若手の政治家の中からもそういった人々が出てきている。若手の起業家もYEOのメンバーを筆頭に、見事なリーダーシップを発揮している方が多い。ベンチャー経営者ばかりでなく、若手の二世経営者や経営のプロにもリーダーとしての力を磨いている人が数多くいる。さらに、グロービス・マネジメント・スクールでは、次を担うビジネスリーダー予備軍が数多く学んでいる。

停滞していた官の改革が、このまま強いリーダーのもと押し進められると、官と民と双方とで、改革が進むことになる。となると、案外日本の将来は明るいのではないかと思えてくる。9月11日の選挙には必ず投票して、構造改革を進めるプロセスに参画していたいと思う。

もう後戻りはできない。改革を前に進めるべく僕ら国民が声を出して、行動するときが来たのだと思う。


2005年8月10日
軽井沢の山小屋にて
堀義人

 

京都大学工学部卒、ハーバード大学経営大学院修士課程修了(MBA)。住友商事株式会社を経て、1992年株式会社グロービス設立。1996年グロービス・キャピタル、1999年 エイパックス・グロービス・パートナーズ(現グロービス・キャピタル・パートナーズ)設立。2006年4月、グロービス経営大学院を開学。学長に就任する。若手起業家が集うYEO(Young Entrepreneur's Organization 現EO)日本初代会長、YEOアジア初代代表、世界経済フォーラム(WEF)が選んだNew Asian Leaders日本代表、米国ハーバード大学経営大学院アルムナイ・ボード(卒業生理事)等を歴任。現在、経済同友会幹事等を務める。2008年に日本版ダボス会議である「G1サミット」を創設。2011年3月大震災後に、復興支援プロジェクトKIBOWを立ち上げ、翌年一般財団法人KIBOWを組成し、理事長を務める。2013年6月より公益財団法人日本棋院理事。いばらき大使、水戸大使。著書に、『創造と変革の志士たちへ』(PHP研究所)、『吾人(ごじん)の任務』 (東洋経済新報社)、『人生の座標軸』(講談社)等がある。

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