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「創造と変革の志士」の旅立ち〜卒業式にて

投稿日:2005/06/15更新日:2019/08/21

2005年6月5日の日曜日に、グロービスのオリジナルMBAプログラム(GDBA)の記念すべき第一回目の卒業式が行われた。

朝10時過ぎに、スーツ姿で自宅を出て、二番町にあるグロービスのシティキャンパスに歩いて向かった。 三階で ジャケットを脱ぎ、青色のアカデミックガウンに着替えて、四角形の形をした帽子も被った。そして、二階の卒業生控室に向かった。そこには、二年前からグロービスで切磋琢磨しながら学んできた卒業生の姿があった。皆、スーツ姿で談笑していた。僕は、ガウンを着ている自分の格好への照れくささからか、皆を直視できないまま、「早く着替えるように」と促して、その場からそそくさと退出して、一階の会場へ向かった。

ゲストの斑目力廣氏が既にお見えになっていたたので、ゲスト控室に向かった。暫くの間、斑目氏と最近のホリエモン騒動から、IT起業家のプロ野球参入などに関して意見交換した。斑目氏曰く、「まだ本物の変革者は、現れていないね。これからの世界を動かしていく変革者は、志が高く、もっと多くの人々の共鳴を呼ぶ人であろう。もしかしたら、グロービスの周辺から現れるかもしれないね」と言ってくれた。お世辞とわかっていても、嬉しかった。

そうこうするうちに、11時近くになり、式典が始まる時間となった。斑目さんと共に、1階の階段教室に入ると、手前側には卒業生のご家族と在校生の方々が既に座って開会を待っていた。奥の方には、講師の方々(ファカルティ)が座っておられた。僕は一番前の席に陣取った。音楽は、ホルストの木星がかかっていた。厳かな雰囲気ながらも、手作りの温かみがある卒業式の雰囲気がそこにはあった。

式が始まり、12名の卒業生が、黒いアカデミックガウンに身をまとい入場してきた。皆、拍手で歓迎した。一人一人の表情からは、自信とともに達成感を感じ取れた。僕は、彼らが堂々と行進して入ってくるのを見ているうちに、熱いものがこみ上げてくるのを感じた。僕自身、一人一人のメンバーと、全力でこの二年間ぶつかってきたのである。僕は、『起業家リーダーシップ』というコースの講師として接してきたこともあったし、『経営道場』の師匠の立場で叱ったりしたこともあった。また、‘学長‘としての立場で、グロービス・マネジメント・スクール(GMS)や大学院化をどうすべきかを議論したこともあった。その思いが、彼らの入場している間に頭の中をよぎっていく。

※参照コラム
■「創造と変革の志士に向けて」 
■「学びの場」と人間の成長 
■グロービスMBAの入学式

未熟な僕が、彼らから逆に教えられることも多くあった。グロービスにとっても最初の大学院化のチャレンジであり、失敗や至らない点は数多くあったと思う。受講生が不満を言い、それをスタッフ とや講師とともに一生懸命に改善していく一幕もあった。彼らは、海のものとも山のものとも、今後どうなっていくのかわからない、一民間のビジネススクールを信じて、飛び込んできて、卒業していくのである。黒いガウンに身を包み入場行進してくる卒業生の姿に、感極まるものを感じた。

全員が入場し、卒業生が静かに中央に着席した。司会の木暮佳子氏の表情にも、僕と同じようなものを感じ取れた。開会の挨拶も短く終わり、すぐに僕のスピーチの番になった。促されるように、壇上に向かったが、ジョークから始まるいつもの雰囲気にはなれなかった。感情がこみ上げてきて、なかなか言葉が出ないのだ。準備してきたものがあったので、それをそのままゆっくりと、感情をこめて、読み上げることとした。

「ご卒業おめでとうございます。
2年ほど前に、旧グロービスのキャンパスで、入学式を行ったのが、つい先日のように思えます。二年前に僕らは、志を持ち、アジアNo.1のビジネススクールとなるべくGDBAプログラムをつくりました。皆さんがその第一期生として応募しくれて、このプログラムが始まりました」。

ここで、一言、原稿にはない言葉を言った。
「皆さんには、「おめでとう」とお祝いするとともに、「ありがとう」と感謝をしたいと思う」。
そして、原稿に目を戻した。

「それから二年間で、皆さんは、「創造と変革の志士」として、3つの教育理念、つまり、能力を向上し、人的ネットワークを構築し、志を醸成してきたと思います。

能力開発に関しては、グロービスにて考える力、経営のフレームワーク、ヒューマンスキルはかなり身についてきたと思います。

人的ネットワークに関しては、このGMSにおいて、皆さんの生涯にわたる友達も多くつくられてきたと思います。今後ともその仲間を大切にして、苦しいときには、お互いに「集団出世主義」で助け合って頂けたらと思っています。

そして、『志』です。初代宮城大学学長の野田一夫氏が言ってくれた『志』の意味を僕は、忘れないです。

・壮大なもので
・多くの人間を感動させ
・そして、やることを事前に意思決定する。

これが『志』であります。できたらいいな、では『夢』でしかないです。

皆さんは、これら3つの理念、能力開発、人的ネットワーク、そして志を胸に、卒業されていくと思います。

アメリカでは、卒業式のことをCommencementと呼びます。つまり、「始まり」です。

本日が、皆さんの『志』実現のプロセスが始まりです。
卒業後も、志を忘れることなく、友達・仲間を大切にし能力向上に努力をしつづければ、必ずや、皆さんが望む人生が開けてくると思います。

ご卒業おめでとうございます。そして、これからの皆さんの更なる発展を祈念して、僕の挨拶と代えさせて頂きたいと思います。

2005年6月5日
グロービス・マネジメント・スクール代表 堀義人」

途中で、つかえることがあったが、なんとか読み終えた。そして、最後に「おめでとうございます」と深々と頭を下げ、壇上を後にした。会場は静かであった。気持ちは伝わったと思えた。

続いて、ゲスト・スピーカーである斑目氏による卒業スピーチである。斑目氏は、MBAプログラムの必修科目である『企業家リーダーシップ』のゲストスピーカーとしてクラスに参加している。また、何名かとともに高野山にも登ったこともあった。その斑目氏が、卒業式でメッセージを送ってくれるのである。

斑目氏も同様に志に関してのスピーチを用意されてきたようである。要旨は、以下であったと思う。
「クラーク博士は、ボーイズ・ビー・アンビシャスと言われました。これは、少年よ大志を抱けと訳されて、多少誤解を招いている面があります。この言葉の後には、すぐに続く言葉があります Be ambitious not for money or for selfish aggrandizement です。つまり、富とか名声のために大志を抱くのではなくて、自らがやりたいことを実行するために大志を抱いて欲しい」と。静かながら、確実に言葉が伝わっていたと思える。

僕は、控え室での「グロービスの周りから新たな変革が生まれてくる」との会話を思い出しながら、 感慨にふけっていた。

新たな変革は、金銭欲や名誉欲ではなくて、自己実現欲求や社会への使命感を抱いた人々の中から生まれてくるのであろう。そして、この12名は、その資質を明らかに持っていた。そもそも名声が欲しいならば、無名に近いグロービスのMBAプログラムを受けないであろう。グロービスよりも、一橋大学や慶応大学に行っていたであろう。彼らは、グロービスのプログラムを信じてくれたのである。

そして、仕事をしながら、夜間と土日に、家庭に多少の迷惑をかけながらも、学び続けたのである。ある人は転職をして人生の転機を迎えている人もいたし、ある人は独立もしていた。その多忙な中でも、グロービスのケースメソッドで学ぶことを欠かしたことは、一度も無かった。頭が下がる思いである。

式次第は進行して、卒業証書の授与が行われる。僕が、再び壇上に向かった。僕自身も若輩ものなので、正直言って、卒業証書を渡すほどの立場ではないのでは、と思っていた。しかも、受講生には僕よりも年長の人がいるのだ。しかし、吉田松陰も若かったのである。自らの役割と自覚しながら、卒業証書を見つめ、一人づつ名前を読み上げていった。卒業していくそれぞれの人とは、それぞれの思い出があった。一緒に軽井沢合宿をしたメンバーや、個別のキャリアの相談にのった人もいた。経営道場で喧喧諤諤の議論をした人もいれば、あすか会議の実行委員として一緒に頑張った人もいた。卒業していくことに寂しさを感じながらも、一人づつ名前を読み上げ、各自に卒業証書を授与して、しっかりと握手をした。12名全ての方々に気持ちをこめて、授与していった。

受講生代表のスピーチがあり、手作りのこじんまりとした第一回目の卒業式は終わっていった。そして、引き続き、懇親会が行われた。昼食を取りながら、ゆっくりと時間が流れていった。卒業生、ご家族の方、在校生、講師の方々、スタッフのみんなが参加していた。皆、一つの区切りであることを認識しながら、それぞれに感慨深い思いをもちながら、談笑していた。ゆったりとした中に温かみが感じられた。在校生による卒業生に向けてのはなむけの言葉も印象的であった。卒業生の一人一人の挨拶にも、達成感が感じられていた。

そして、懇親会も予定通りに滞りなく終わった。最後に、キャンパスの外に出て、帽子をぱ〜〜んと投げ上げる儀式を行うことにした。掛け声とともに、僕は自分の青い帽子を投げ上げた。見上げると、青い空の合間に白い雲が見え、そこに黒い帽子がいくつも舞っていた。思わず笑みがもれていた。落ちてきた帽子を拾い、卒業の儀式は、全て完了した。

アカデミックガウンを着替えて、入り口で皆と別れを告げることにした。卒業生と在校生は、そのまま二次会、三次会と行ったようである。僕も、行きたい気持ちがあったが、これからも長い付き合いができそうなので、今日のところは遠慮することにした。

最後に大きく両手を振って、「お疲れ様でした」と皆に言い、卒業生・在校生とは逆の方向に歩き始めた。ほのかな満足感に包まれている感覚を味わいながら、振り返ることなく、自宅に向かって歩きつづけた。

2005年6月12日
自宅にて
堀義人

 

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