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ブータン王国旅行記Ⅱーグロス・ナショナル・ハッピネス(GNH)の国

投稿日:2006/05/02更新日:2024/11/23

朝、小鳥のさえずりが聞こえてきた。3時間の時差があるため、起きるのが早くなってしまう。窓の外はまだ薄暗い。かすかに山の形がうっすらと見える程度である。ベッドの中でまどろんでいるうちに、山の形がくっきりと浮かび上がってきた。黒から緑に、そして木々の色の違いまでが 鮮明に見えてきた。空も青くなってきた。

ベッドから起き、身支度をして、メールチェックするために部屋を出る。空気は、乾燥していて美味しい。標高2000Mを超えるためか、朝は冷え込む。

部屋には、インターネットが繋がっていないので、宿の事務所を間借りさせてもらっている。滞在中は、そこに 立ち寄り、すぐに メールの返信ができるようにしていた。

ガイドのニドゥと運転手のセレンが迎えに来てくれた。ブータン最高の聖地の一つである タクツァン寺院に向かうことになっていた。標高2900Mの絶 壁の岩肌に立つ寺院である。30分ほど車に揺られて、山の麓に向かう。ブータンの道路は、デコボコで、「揺られている」感じがする。

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麓からタクツァン 寺院を見た印象は、「絶壁に貼りついた寺院」である。とてもそこまで到達できそうも無いところに、寺院が建てられているのだ。標高2000M強から3000M近くまで山登りをすることになる。空気が薄いのか、息が荒くなりやすい。心なしか体が重く感じられた。

途中、飛行機が舞いながら着陸していく姿が見てとれた。谷間を縫いながら飛行しているのである。

一時間半ほど登山をし、見晴台に着いた。白い壁の タクツァン 寺院が、絶壁の谷を越えて真正面に見てとれる。岩山に張り付いている様が近くから見えた。そこから細い坂を下がり、滝にかかるつり橋を越える。橋の下は、数百 メートルの絶壁である。滝のしぶきが気持ちいいが、怖くて下を見ることはできない。

階段を登り、タクツァン 寺院に到着した。この寺院は、8世紀にブータンに仏教を伝来させた グル・リンポチェ が、瞑想をした洞窟の聖地に建てられた寺院である。 グル・リンポチェ が瞑想をした場所で、祈りをし、お布施をして、聖水を口の中に入れた。 参拝客が多く、落ち着かない雰囲気であった。

絶壁の上の方の見晴らしが良いところで、一休みした。はるか下の方に、パロの谷が見える。ふと色んなことを考え始めた。

「どうやってこんなところに300年以上も前に寺院を作ったのであろう。この寺院をつくるために、資材を何千回と運ばなければならなかったであろう に、作った人々は、苦しいとは思わなかったのであろうか。恐らくは、希望に燃えながら、何度も何度も山を行き来しながら資材を運んだのであろう。信仰がなせる業なのであろう」。

下りは、登りに比べ、はるかに楽であった。歩きながら、ガイドのニドゥと、ブータン人の価値観に関して、話をした。ブータン人は、信仰を重んじ、物質的な価値よりも精神的な価値に重きをおくのだという。

国王は、Gross National Product(GNP)よりもGross National Happiness(GNH) の方が重要だと説いている。つまり、経済的な価値よりも、精神的な幸せを重んじるのである。

ニドゥに質問してみた。「幸せの定義は、何ですか?」。

ニドゥは、平然とした顔で答えた。「教育を与えられて、食事にありつけて、 家族が平和で過ごせるならば、それ以上に何を望むというのか。それだけで、十分幸せでしょう。不必要な欲があるから、物質的に豊かになっても、精神的には不幸せになってしまうのだ。欲を無くし、身(body)、口(speech)、意 (mind)を鍛錬することが必要だよ」、と経典の内容がそのままニドゥの口から語られた。

昼食は、ブータンの伝統様式で建てられた農家で頂くこととした。ブータンの農家は、世界的に見ても大きい方に入ると思う。通常3階建てで、直方体の形をしている。

一階は、家畜用に使われていた。外を見ると牛や馬がのどかに放牧されていた。二階が穀物などの貯蔵用である。収穫した穀物や野菜を保存するのである。ネズミが入らないように硬く戸締りされていた。三階が、住居用スペースだ。寝室、居間、食堂などとともに、家の真ん中には、仏間(寺院)があった。仏陀の像とともに、さまざまな仏教的な飾り物がかかっている。家の主人が、仏像を静かに修復していた。

ニドゥによるとブータンの全ての家には、仏間があるのだという。その仏間の前で食事をした。ブータン料理である。世界一辛いとガイドブックに書いてあったが、確かに辛い。唐辛子を香辛料としてではなくて、野菜として扱っているところが、既に僕らの常識を超えている。農家の奥様が、牛の燻製と茄子料理を振舞ってくれた。これも相当な辛さだ。ブータン産のビール、「レッド・ パンダ」で舌の熱さを和らげたが、奥様には申し訳ないが、あまり食は進まなかった。

農家のトイレを貸してもらい、石風呂を覗いた。あたりには、野良犬がうろちょろしていた。ブータンの犬は、苛められないからか、悠然としている。人間が、不必要な殺生や苛めを全くしないから、人間に対して安心し切っているよ うであった。

食後、パロの街中を散策した。パロは、人口2万人の小さな農村である。ブータン全体でも75万人程度の人口しかない。国土は、九州の1.1倍と大きい。国土は、殆どがヒマラヤの麓の山間部の標高2000M前後のところに位置する。

雨がパラパラ降ってきたので、急いで宿に戻った。時間があったので、部屋で仏教の経典に目を通すことにした。斑目氏から頂いた、仏教経典「The Teaching of Buddha」の日英対訳式のものである。宿に泊まると、聖書とともに置いてあるオレンジ色の経典である。英語のガイドとの意見交換の際には、英語の仏教用語を知らなければならないので、勉強しておくつもりでもあった。

翌朝の出発が早いので、早めに夕食をとることにした。暖かい格好をして、外で夕食を食べ始めた。周りは、山で囲まれている。谷間に立っている宿である。

間近に、雪を頂いたゲダン山が見える。6000Mだと言う。雪を頂いている姿が、チョコレートケーキにかかったパウダー・シュガーのようであった。

雨がまた降り出したので、急いで宿の中に戻った。食後部屋に戻ったが、電気 が暗く、読書ができない。山登りの疲れもあったので、その日は、早めに就寝することにした。

2006年5月1日

ブータンからバンコクに向かう機中で執筆

堀義人

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