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ミャンマー旅行記 その2-ヤンゴンからバガンへ

投稿日:2005/05/20更新日:2019/08/21

翌朝6時に、ロビーでガイドと待ち合わせた。ガイドは、トントンさんと言い、日焼けした顔に笑顔が良く似合う中肉中背の方だ。見た感じは、20代前半の若者に感じるが、36才だという。昨日の美しい方もそうだけど、ミャンマー人は若く見える。トントンは、坊主頭が少し伸びた状態になっていた。つい一週間ほど前まで、修行僧として鍛錬していたらしい。今回は、16才になる長男と一緒に修行僧となったと嬉しそうに写真を見せてくれていた。既に過去20年にわたり、三回も修行僧になったのだという。

車で、 高さ約100mの世界一のパゴダ(仏塔) であるシェダゴンパゴダに向かう。このパゴダは、2500年前に仏陀の聖髪を8本もらい受け、それを奉納したのが、起源となっているらしい。地図を見るとミャンマーのすぐ隣がインドである。その由来も信憑性がある。ミャンマーはタイと同じで、上座部仏教である。タイと同じように街中のいたるところに茶色の袈裟を着たお坊さんを見つけることができる。ただ、圧倒的に数はミャンマーの方が多い。上座部仏教は、インドから、ビルマ、タイ、ベトナムと南回りで伝播し、主に「個人の救済」のために修行をするのが特徴である。一方、大乗仏教は、ネパール、チベット、中国、日本と伝播し、主に「衆生の救済」を目的としている点が違う、とトントンが説明してくれた。

金色に輝くパコダでお祈りをしたあとで、僧院と瞑想センターに連れて行ってもらった。僕は仏教に興味があるので、仏教がどのように生活に根付いているのか興味を持ったのだ。このように、観光地でないところを訪問するのが、旅の醍醐味でもある。

僧院では、子供達も集まっていた。僧院がコミュニティーとしての機能をもっていることがよくわかる。瞑想センターでは、袈裟を着た修行者がゆっくりと歩いていた。ミャンマー独特の内観という瞑想手法を取り入れていて、休憩中でも自らをみつめることが要求されるらしい。その僧院の近くでトントンと話しているうちに話題は、軍政のことになった。

ミャンマーでは、1988年に些細なことが発端で、民主化運動が激しくなった。トントンは、その当時学生で、親の反対を押し切って民主化運動に参加していたらしい。民主化運動が激しくなるにつれて、苛立ちを抑えきれなくなった時の権力者のネウィンが、「次にデモが起きたら胸にあたるように発砲する」と脅しをかけるに至った。その脅しを出した次のデモで事件が起こった。ネウィンの予告どおり、参加した人々に軍隊が胸に当たるように発砲して、1000人以上が死傷したらしい。その当時、たまたま帰国していた ビルマ独立の英雄、アウンサン将軍の娘であるアウン・サン・スー・チー女史が中心となり、 現在まで民主化運動が続いている。だが、いっこうに進展していないのが実状である。

ミャンマー人の大半は、民主化を望んでおり、軍政を良いとは思っていない。軍事政権に関して、どう思うかと聞いてみても、「僕らにはどうしようもないことだ」、とトントンの優しい笑顔の奥に潜む、あきらめの境地が感じとられ、胸が痛む。この軍政の前は、社会主義的体制であり、独立の前は、英国の植民地である。タイと比べても、文化的にも豊かで軍事的にも強かったビルマは、その後の歴史の中で影を潜めてしまった。仏教の修行の中に、各人の精神的豊かさを追い求めているのであろうか。

僧院を後にして、市内に向かった。市内は、不思議と整然としていた。自転車もバイクも走っていないのである。トントンに理由を聞くと、「軍事政権が禁止したから」と答えが返って来た。車を買えない人は、バスか徒歩しか移動の手段が無いらしい。良く見ると確かに良く歩いている。ミャンマー人は、ロンジーという一枚布の巻きスカートみたいなものを男女問わず羽織っている。蒸し暑い気候には、ロンジーが合っているということだ。

朝10時前にホテルに戻った。この時期は、暑いから早朝と夕方にしか観光ができないらしい。ミャンマーの季節は、主に三つに分かれているという。6月から10月の雨季、11月から2月の乾季、そして3月から5月の暑気である。観光に適したシーズンは、11月から2月の乾季だという。5月の暑気は暑すぎるので、観光には適していないらしい。その代わり、観光客も少ないので、スムーズに移動できる。僕にとっては、行ける時がベストなシーズンである。

13時過ぎにホテルを出て、国立博物館に立ち寄り、ヤンゴン空港に向かった。14時半発のフライトでバガンに向かうことになっていたのだ。空港は本当に暑かった。40度を超すぐらいであろうか。待合室の窓ガラスは割れていて、滑走路のアスファルトで焼けた熱風が、そのまま待合室に入り込む。3分としないうちに汗だくになり、ひたすら飛行機が来るのを黙って待ちつづけることになる。修行僧の気分である。やっとのことで時間となり、飛行機へ案内された。歩いて向かったが、陽射しが強くアスファルトの照り返しが痛いぐらいだ。軽く40度を超していることを体感できた。

飛行機は、直行便かと思ったが、へーホー、マンダレーを経由した。どうやらバカン、ヤンゴンを含む4箇所を給油しながら反時計周りで巡回する仕組みになっているようだ。直行便であれば1時間もかからない距離であるが、2時間以上かかってやっとバガン空港に着いた。空港にホテルの迎えが来ていて、パゴダを両脇に見ながら川沿いにあるホテルに向かった。

エーヤワディー(イラワジ)川の向かいの山脈がとても美しい。ちょうど夕暮れ時である。乾季 ・暑気と続いているからか 、川の水量が少ない。川岸に降りていって、その砂場に座り込んだみた。目を閉じて、夕方の乾いた空気を吸い込み、大地のエネルギーを感じ取る。静かであり、安らぐ境地である。暫くして目を開けると、あたりを夕闇がつつんでいた。

暗くなりきる前にプールで一泳ぎした。泳いでいるうちに真っ暗となった。軽く夕食をとって静かにミャンマーの二日目が過ぎていった。

2005年5月16日
ニューヨークのホテルで思い出しながら執筆
堀義人

 

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