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欧州視察団Ⅱ〜モスクワの風景

投稿日:2007/06/05更新日:2019/08/21

翌朝、時差の影響もあり朝5時頃に目が覚めた。窓の外はもう既に明るかっ た。この季節になると暗い夜の時間がほとんど無いのだという。日本との時差は、夏は5時間である。もう既に東京では仕事が始まっていた。メールチェックをして、一段落してからまたベッドに戻ることにした。

朝8時半に視察団とともに朝食を済ませる。ビュッフェスタイルだが、キャビアが置いてあった。「レッド・キャビア」と称して、「いくら」も置いてあった。視察団と打ち合わせをして、 予定を決めることにした。コンファレンスは、17時スタートなので、それまでの時間モスクワ観光に充てることにした。先ずは、プーシキン美術館に行き、救世主キリスト聖堂を見学した。午後からは、クレムリンに訪問である。タクシーがなかなかつかまらないので、ほとんどが地下鉄と徒歩での移動である。

クレムリンで、有名な武器庫とダイヤモンド庫を見学する。そして、クレムリンの外壁をモスクワ川沿いに半周して、赤の広場に向かう。ボクロフスキー聖堂の中を見学して、レーニン廟を横目に見ながら赤の広場を横切り、グム百貨店に入った。モスクワは日差しも強く予想外に暑いので、この百貨店で帽子を購入した。国立博物館の横を通って、ボリショイ劇場を見学する。あいにく改装中で全容を拝むことができなかった。当然ロシア料理も堪能した。定番のボルシチ、ビーフストロガノフなどであった。

この日は、短時間で見れるだけ見ようという、いわゆる「詰め込み型」の観光をしたことになる。僕は、こういう観光はあまり好きではないのだが、初めてのモスクワで、しかも今度いつ来れるかわからない。行かなかったことに後悔したくはないのである。

僕は後日、現地の友達に念には念を入れて、次の質問をしてみることにした。 この友達とは、昨年の9月にシンガポールで開催されたフォーブスのコンファレンスで出会い、意気投合して、モスクワで再会することを誓ったのである。

「モスクワで絶対見逃してはならないものは、何ですか?」、と質問してみた。

彼からの答えは、以下の順番であった。

(1)「先ずは、美しいロシア美人を見逃してはいけないよ」、と。さすがに僕の友達である。リストの一番最初がロシア美人かぁ。当然、彼がそう言ったので、後日責任を持って、夜のロシア美人観光ツアーを企画してもらった。
(2)クレムリン(世界遺産)
(3)ボクロフスキー聖堂やノヴォデヴィッチ修道院(世界遺産)
(4)ボリショイ劇場
(5)そして、トレチャコフ美術館だと。

僕はその言葉に忠実に従い、モスクワ滞在中に全てを観ることにした。だが、しっかりとコンファレンスにも参加しなければならないので、一つ一つに時間を余り使えなかった。

せっかくの機会なので、モスクワ滞在中にボリショイ劇場のバレエを観に行くことにした。それにしても、ロシアのバレリーナの美しさ、そして踊りの繊細さ、且つダイナミックさは、思わず息を呑むほどだ。観客のバレエを観る目も肥えている。ブラボーの嵐、カーテンコール、そして再度登場することを催促する拍手のリズム。どれをとってもピカイチである。

ただ、幕の合間の休憩時間中に、ビックリすることがあったのだ。僕はいつものようにシャンパンを注文しようと思い並んでいた。シャンパンのリストを見ると、200という数字と1600という数字が並んでいた。僕は、グラスが200ルーブル(約1000円)、ボトルが、1600ルーブル(約8000円)なのだと思い、グラスのシャンパンを注文しようと思った。

直前にいる中年女性の順番となり、グラスのシャンパンを3杯注文するのが見えた。レジの電光表示では、1600が出てきて3でかけて、4800となり、消費税なのか30が加わり、合計4830ルーブルと出てきた。その女性 は何のためらいもなく5000ルーブル札を出し、170ルーブルを受け取ったのである。200と1600というのは、200ccが1600ルーブルとういうことが後でわかった。

なんと一杯8000円もするグラスのシャンパンを平然と飲んでいるのである。シャンパン3杯に、合計で2万4千円も払っているのである。僕は唖然として、開いた口が塞がらなかった。僕の順番となり、カウンターにいるウェイターが注文を聞いてくれたが、僕はとっさに後ろに並んでいる方に順番を譲り、その列から逃げるようにして抜け出していた。

皆、8000円もするグラス・シャンパンを飲んでいるのである。「何かがおかしい」。そう確信した瞬間である。バブル時代の東京ですら、こんなことは無かったと思う。

後日、前述の友達と共に、ロシア美人が集うバーをハシゴしている間に、その状況を話した。彼は、「ロシアは景気がいいから、今は土地や株の値上がりが激しく、皆裕福になっているからだ」、という。「エルメスのバッグなどは、香港で買うのとモスクワで買うのでは5倍も違う」、と。5倍は強調だと思うが、高級品はとても高い。一方では、貧困層は、まだまだ多いのである。

そして値上がりの一例として、彼の体験談を語ってくれた。「2000年に買ったマンションが、既に5倍の値段がついている。この1-2年だけでも、倍になっているんだ」、と説明してくれた。

僕は、日本のバブルと同じ状況であることを感じ取ったので、投資家である彼に、日本でのバブルはなぜ起こって、結局どうなったのかを説明してあげることにした。友達は元弁護士だが、今はファンドマネジャーのようなことをしているので、投資環境に関しては、何でも吸収しようという意欲を持っているのである。当然英語はペラペラである。

僕は、今のロシアの景気について、石油やガス、そして地下資源や水産資源によって外貨を稼ぎ、国内では、株と土地の値上がりによって、景気が保たれている気がしてならなかった。給与水準を聞いても、特に高いわけではない、という。ちなみに彼は、ロシアの株式は全て売却済みだという。

ロシア人のメンタリティも激変していた。ロシア全体が教会などの宗教を弾圧してきた共産主義から、思想の自由も保障された市場経済に移行しているのである。その過程に起こりがちな、拝金主義的な風潮がかなり強く見えてきている。中国で起きているのと同じような状況である。お金が全てで、お金を持っている人が偉い、という価値観がはびこるのである。

ロシアでは、「ゴールデン・ユー」と呼ばれる40前後のお金持ちと官僚が集う場所と、その次のクラスが集う場所、そして貧困層が通う場所とが、しっかりと分かれてしまっているのだという。日本の格差問題とは次元が違う、とてつもなくデカイ格差が生じているのである。

このゴールデン・ユーは、国有資産を安く買い取り、石油関連で富を得て、ビリオネア(億万長者)になっているのである。そしてロシア経済の成長と株・土地高を背景に海外の資産を買い漁っているのである。英国サッカー、プレミア・リーグのチェルシーなども、そのゴールデン・ユーの一人であるビリオネアが買ったのだ。

しかし、これは長続きするとは、到底思えない。中国経済よりも危うさを感じるのは僕だけであろうか。

シャンパンとキャビアを楽しみにしてきたのに、夜は高くて手が出ない。結局、ビールとウオッカ・トニックを飲みながら、ロシアの夜を過ごすことになった。日本人の方がお金持ちの筈なのに不思議な感覚である。でも、ロシア人女性の美しさを観賞するのには、お金がかからないのである。(^^)

モスクワのナイトツアーを堪能して、友達の運転手つきのポルシェ・カイエンでホテルまで送り届けてもらった。さすがにその時間になると天空も真っ暗であった。

2007年6月1日
成田行きの飛行機の中で執筆
堀義人

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