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「東アジア経済サミット」に出席して その2 〜印象に残った人々〜

投稿日:2003/10/30更新日:2019/09/04

今回の会議を通して、印象に残った方は、以下の3人である。
・ アブドッラーヨルダン国王 
・ リークアンユー上級相 
・ マ・インジョ台北市長

なぜ印象に残ったかを、簡単に説明したいと思う。

1) 先ずは、アブドッラーヨルダン国王。

弊社のベンチャーキャピタルのパートナーであるアラン・パトリコフ氏は、ビル・クリントン前大統領と親しい。そのアランが、クリントン前大統領に「今までで最も印象に残った元首は誰か」と聞いたときの答えが「ヨルダン国王」であった。と聞いたことがある。

クリントン前大統領が会ったヨルダン国王は、1999年に亡くなっており、現国王は前国王の2番目の妻の長男に当たるらしい。そのアランの話を事前に聞いていたので、ヨルダン国王に対して興味が湧かないわけがない。そのヨルダン国王と我々NAL(New Asian Leaders)が、プライベートで朝食をとる機会をいただいた。9時からのスタートだが(中東では、この時間の朝食は普通らしい)、早めに部屋に入り、一番良い席を陣取り、ワクワクしながら待っていた。すると、おもむろに、なんの前触れも無くヨルダン国王が入場してきたのだ。

今までお会いした韓国大統領やシンガポールのゴー・チョク・トン首相のときのような重々しさを全く演出しない。雰囲気的には、ハーバードのクラスにもいそうな「友達」っぽい感じである。つかつかと気楽に入ってこられた。Heiと言って、すぐに仲良くなれそうな優しさと親しみやすさが感じられる。そして、僕の斜め前に座られた(最近は、Executive Boadの特権で、一番いいところに座らせてもらえる。韓国大統領と会うときのようにヤキモキしなくて済むのである。後で知ったのだが、国王は、僕と同い年で誕生日も2ヶ月と違わない。親しみを持つわけである。

国王は、親の教育方針が良かったのか、世界で最高の教育機会を得ながらも、地道に下積み生活を歩んできている。英国王立軍事アカデミーに通い、OxfordとGeorgetownで国際関係学を学んでいる。その後、ヨルダンに戻って軍に入り、下っ端生活を始めている。ヘリコプターを自ら操縦する事は勿論、厳しい訓練に耐えてきたのだ。その後、前国王が亡くなった後に国王に就任した。軍部での下積み生活をした事もあり、国内での信任はとても厚いらしい。

その国王が、20名あまりのNALとの朝食会で、簡単な紹介の後、何と何と、国王が、だ。パワーポイントを使ってヨルダンのことを「プレゼン」し始めたのだ。国王が、スピーチではなくて「プレゼン」だ。しかもアジアの若者に。これにはビックリした。内容も「プレゼン」にふさわしい内容だ。ちょうど会社のCEOが会社概要、ビジョン、課題、戦略を語るのと同様に、ヨルダンの概要、ビジョン、課題、その取り組み方針を説明してくれた。

一連の「プレゼン」が終わった後に、質疑応答セッションに入った。僕は、手を上げて、日本のことを質問した。質問の趣旨はこうだ。「日本は過去の歴史があり、軍事的なプレゼンスは強大ではない。その日本に対して、国王陛下は、イスラエルの問題やイラクの関係で何を期待されますか?」。彼の答えは、興味深かった。「日本は、中東においては好かれている。欧米列強が中東を蹂躙してきた歴史がある中で、日本は非常にパワフルな経済大国だ。過去の日本と中東の国々がつくってきた友好関係もある。ぜひ"Fair Partner"として、どんどん積極的に関与して欲しい。日本の自衛隊が中東に来るときにはできる限りのサポートをしたい」。

他にも色んな質問が出た。イスラエル、イスラムのテロリスト、アラブの若者文化、アラブ諸国との関係などなど。とても興味深かった。国王は、大学でもスピーチをするなど、若者文化にも造詣が深く(ご自身も41歳と若いので当然と言えば当然だが…)、他のアラブ諸国の保守的な思想とはかなり違っていた。特に興味深かったことは、「今後は政治よりも経済・ビジネスが中心になる。そのためには、教育にも力をいれて、基本的人権・言論の自由を保証し、民間セクターが自由に動けるようにしなければならない」と力強く言い切ったところだ。

この国王が、このまま20年〜30年とこの強い信念と知性とでもって引っ張っていくならば、ヨルダンは、中東のシンガポールのようなポジションになるのではないかと強く信じるに到り始めていた。

そして、朝食会の最後に興奮が待っていた。Executive Boardの一員が、手をあげてこう話しはじめた。「来年2月にマレーシアでNALのリトリートを行います。国王閣下も可能ならばヨルダンの若手リーダーをお連れして出席して頂きたい」。すると、「わかった。参加しよう」と言ったのだ。そして、僕らからは「先ずは僕らが最初に貴国に出向きます」とお伝えすることになった。

なんと、国王からのオッファーだ。しかも「友達」のような雰囲気の方である。ヨルダンかマレーシアで、国王と一緒に語りあえるかもしれない(お酒は飲まれないかもしれないが)。僕は、中近東には、ドバイに一回行っただけだ。投資家候補も中東にはいる。これは、万難を排してでも、行かなければならないと思っている(もしも行くことができたら、またコラムで状況を報告します)。

2) 次にリークアンユー上級相だ。

上級相に関しては、各メディアで紹介されているので、特に僕からは何も説明はいらないと思う。ただ、上級相の洞察力の深さ、わかり易い切り口、ゆっくりとした話され方には、う〜んと唸らされるものがある。今回の会議では、シンガポールのゴー・チョク・トン首相、ジョージ・イェオ大臣なとシンガポール政府の要職の方々とお会いした。ゴー・チョク・トン首相は、どちらかというと実務家タイプである。一方、深見があるのは、ジョージ・イェオ大臣で、リークアンユー上級相と共通するものを感じた。それにしても、皆話すのがとても上手だ。皆を納得させる何かを持っている。

3) そして、マ・インジョ台北市長である。

この方は、将来間違いなく台湾の総統になる気がする。甘いマスク、心のこもった喋り方、堪能な英語、信念をもった政治姿勢、台湾を思う気持ち、どれをとっても抜群なものを感じる。台湾がこれからどうなるのかは、このマ・インジョ市長の双肩にかかっている気がする。

今回、これら超一流の方々にお会いできて、様々な刺激を受けた。彼らが持っている雰囲気、知性、洞察力、コミュニケーション能力、信念、それらのものを間近に感じられたのである。これは、ポジティブな刺激を受けないわけがない。

この会議を主催した、WEF(今までわかりやすくダボス会議と言ってきたが、これからはWEF(World Economic Forum)と呼び変えることにする)の創業者のProfessor Klaus Schwabにも当然感じるものがある。たった30年ほど前に、ダボスの片田舎で始めた会議がこれだけ大きくなり、多くの方々を巻き込んでいるのである。たった一つのビジョンから始まったものが、これだけの重要性を持ち始めているのだ。彼は、考えることも大きいし、実行力もある。何よりも平然と各国の要職の方々と渡り合えるのだ。

これらの方々を目の当たりにすると、あたかも次の質問を投げかけられているように思えてくる。
「我々グロービスは、もっとできるのではないだろうか。小さくまとまらずに、もっとグローバルにもっと大きくあるべきでないか。グロービスをアジアNo.1のビジネススクールにしようではないか。INSEADやHBSに負けない学校にして、数多くの優秀な方々をアジアから招聘しようではないか。ベンチャーキャピタルとしても、もっと数多くの企業を作ろうではないか。まだまだ頑張りが足りないのではないか。」と。

僕はサミットで、グロービスが主催したカクテルパーティの冒頭にこう挨拶した。「僕は、日本人として、そしてアジア人として、アジアの友好と繁栄に寄与することを一つの使命として捉えている。このWEF(ダボス会議)のNAL(New Asian Leaders)のExecutive Boardの一員としてこの場にいることを光栄に思う。」

当然、光栄に思うばかりでなく、アジアのリーダーの一員として、大いなる貢献をしていきたいと思っている。僕は、WEFのNALという、海外で活躍する場を先ず一つ得ることができた。先ずはここで思いっきりぶつかってみて、多くの友達をつくり、大いに学び、大いに刺激を受け、力を蓄えようと思う。自らの力をつけながらも、グロービスの組織にも大いなる刺激を与えて、グロービスを更にグローバルスケールに持っていき、アジアNo.1のビジネススクールやベンチャーキャピタルなどを創りたいと思う。

今回の出張で、自らの足りない点も理解できたので、日々研鑚に務めようと思う。そして、ニューアジアンリーダーとして、名実ともに認知されるようになれたら幸いである。

シンガポールにて

 

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