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ダボス会議の「新しいアジアのリーダー」研修合宿に参加して

投稿日:2003/06/22更新日:2019/09/04

今回、ダボス会議を主催しているWorldEconomicForum(WEF)の新しい試みとして、「アジアの新しいリーダーを一同に介して、アジアの将来を語るリトリート(合宿研修)を行う」こととなった。

このNew Asian Leader(NAL)のプログラムは、WEFの正式なプログラムになっておらず、昨年行われたWEF主催の東アジア経済サミットに参加したメンバーが、継続的に集まるべきだということを提唱して、この会が開催されることとなった。今年は、ソウルを筆頭に、シンガポール、北京、そしてニューデリーでこのリトリート(合宿)形式で行われる予定である。

僕は、今回なぜだかWEF事務局から声を掛けられて、迷った末に引き受けることとした。日本の政財界のリーダーは世界に向けて発信する力が弱いことに以前から失望していたので、知行合一自らが出て行って発言すべく、参加することとした。

今回、日本から参加するメンバーは、僕を含めて6名である。政治家1名(古川元久氏)、教授の方2名(ジェームズ近藤、桜内氏)、そしてビジネス界より3名(船橋氏と西山氏)である。かなり若い人選となっていた。

日本のメンバーには当日、「2020年のBlue Print For Japan(日本の青写真)」を発表することが任務として与えられていた。日本のメンバーが朝に夜に集まり、討議することとなった。2020年の日本の姿と言っても、かなり幅が広い。経済、政治、文化、ビジネスなど多岐にわたる。昨年までの反省に則って、今年は、以下基本ポリシーを打ち出した。
1) トーンを明るくポジティブにしようということを決めた。そして、 
2) なるべくインタラクティブにしようと決めた。

そして考えたのが、以下方法である。
1) 明るくポジティブに:海外からの参加者は、日本についての基本的な現状認識が不足しているので議論のベースを共有し、またこれを機会に日本についての正確な理解を深めてもらうためにも、各分野(経済、経営、安保・政治、社会・文化)それぞれについて2〜3枚のチャートを出すべきではないか。 
2) インタラクティブに:5つのシナリオを提示してNALの参加者全員が日本のリーダーになったつもりで、100ある予算を配分してもらう。100を全部一つのシナリオに配分するのか、50を二つに配分するのかは、各人の自由である。

そして、討議に討議を重ね、結局以下のとおりの3部作のフォーマットとなった。
■ パート1. 発表&プレゼン:
-イントロ(総括)
・経済
・ビジネス
・政治 
■ パート2. 5つのシナリオの選択:
1) R&Dを中心とする大企業中心型の社会。製造業を外部化する。つまり、今強い部分を更に強くするシナリオ。 
2) 生産性が低い分野をリストラする。今、弱い部分を徹底的にリストラするシナリオ。 
3) アジアに対して門戸を広くオープンにする。移民を受け入れ、通貨統合まで含めて考えるオープンドアなシナリオ。 
4) 日本伝統文化を豊かにして、観光業を推奨して、蓄積した資本を使いながら精神的な充足を求めるクローズドなシナリオ。 
5) 企業家精神を発揮して、新たなコンテンツを生み出す社会。個人主義やクリエイティビティを重んじるシナリオ。 

これらを、参加者に選んでもらって、それから、
■ パート3. 質疑応答:に入る

何度か会合を重ねて、ブレストしながら発表のコンセプトを練り、ある程度のプレゼンの骨子ができた。
韓国大統領と会った日の夜にソウルで、6人が集まり、最終準備をした。3つのパートの時間配分も決まり、何度か段取りに関して打ち合わせをした。

いよいよ当日だ。日本チームは、朝9時の発表だ。つまり、他の地域・国に先駆けての発表となる。

WEFのディレクターに紹介を受けて、先ず僕が冒頭に簡単に挨拶と流れを説明して、すぐに古川さんを紹介した。古川さんは、過去の「日本の青写真プロジェクト」との関係を説明して、今回の目的を説明した。古川さんが近藤さんを紹介して、近藤さんがマクロ経済の現況を説明した。実に、うまい流れだ。近藤さんの紹介を受けて、僕が日本のビジネスのポジティブな現況を説明した(このスライドは、このコラムの末尾に掲載する)。そして、桜内さんを紹介して、桜内さんのパートが終わって、船橋さんと西山さんが紹介されて、いよいよ参加型のゲームが始まる。5つのシナリオに関して、参加者が皆日本のリーダーになったつもりで考え始めた。

5分ほどルールの説明をして、各自にVoteしてもらった。結果は、思ったより割れた形になっていた。参加者も皆、様々の違った意見をもっているようだ。

ゲームの後で、質疑応答に入った。Q&Aは、僕の役割だ。今回の机の配置がコの字型になっているので、思いきって中の方に入っていって、質問を奨励したり、意見を投げかけてもらったりした。これは、グロービスのクラスでもやっていることなので、慣れたものだ。英語でのプレゼンや質疑応答も、ファンドレイジングのロードショーに出ているので、これもなれている(コラム:「長いロードを終えて…」99/06/03 をご参照のこと)。

質問が出るたびに、日本チームに答えてもらいながらも、自ら答えたりもした。最初の質問は、日本における女性の役割だ。韓国人女性経営者からの質問で、彼女は「韓国で壁を感じているが、日本ではどうか」、という内容だ。更に、「日本の起業環境はどうか?」とか「日本の安全保障をどう考えるのか?」、「日本がスイスのようになってしまう現状をどうとらえるのか?」、「中国との関係はどうか?」などとかなり多岐にわたる質問が続いた。さらに、「日本の文化の良さを日本人が認識してフランスのようになるべきだ」、という意見もあった。

予定時間が近づき、もうそろそろ話をまとめようかと思ったときに、WEF主催者から10分間延長の許可をもらった。明らかに盛り上がっていることを感じ取られたし、主催者側も新しい試みの最初のセッションなので、この雰囲気を持続したいと思っているのだろう。そのまま続けることとなった。最後に、「日本はアジアのリーダー的役割をどう捉えるのか?」という質問に対して、僕が、答えることになった。

「日本はアジアにおいて過去に歴史がある。今回のプレゼンで、もしも僕らの2020年のビジョンがアジアのリーダーとしてNo.1になるというビジョンを打ち出したらどう考えるであろうか。皆からは、当然反感を買うと思う。リーダーシップというのは、そうなるという本人の意思が必要だけど、それを認める構成要因の意思も必要になる。逆に皆さんに、質問したい。アジアの他の国々は、日本にリーダーとしての役割を期待するのか。皆の国は、中国の台頭の際に、どういう役割を果たすのか?」と質問したうえで、「この問題は、とてつもなく大きい。皆と一緒に考えつづけたいと思う。」とまとめた。

そして、日本のセッションを終えた。拍手が沸き起こり、僕は日本チーム一人一人に声をかけて、健闘を称えて、御礼をして、他の参加者がいるコーヒーセッションに入った。他国からの参加者は、一様に皆満足で、いろんな人から、「Good Job!」という声をかけられた。

その後、午前中に韓国、インドが発表して、ランチの後に、午後に東南アジアと中国の発表があった。そして、リトリート全体のまとめが行われた。アジアのリーダーに日本のことを正当に評価してもらいたいと思い、また日本のプレゼンスを上げるために、僕は積極的に発言するように心がけた。韓国のセッションの時に1回質問して、ランチでも質問した。最後のまとめでは3回も発言した。ディナーの後のセッションでも発言した。

終わってから一日たって、今ソウル市内のホテルでパソコンを打ちながらふとこの2,3日の出来事を振り返ってみた。今回のリトリートでもすっと考えつづけたことがある。それは、何かというと、「アジアの新しいリーダーとは何なのだろうか」、「僕は、アジアの中でどういう役割を果たしていくべきなのだろうか」。という点だ。

これも大きすぎる問題なので、じっくりと時間をかけて考えつづけていきたいと思う。

2003年6月22日 
ソウル市内のホテルにて

 

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