先週は、僕の尊敬する欧州とアジアの起業家が来日した。僕は、月曜日に、ヨーロッパを代表する起業家のリチャードブランソン、そして木曜日にアジアのアナンダ・クリシナン氏と会った。
ちなみに、僕は、欧米亜の地域ごとに、1名づつ、計3名の尊敬する起業家がいる(もちろん日本にもいるが、日本は割愛する)。前述の欧亜の2名と米国のウオレン・バフェット氏である。3名に関して、このコラムで時間を見つけながら紹介することとする。
先ずは、リチャードブランソンから始めよう。
10月12日に、リチャード・ブランソン(以下リチャードと呼びます)は、自著のプロモーションと日経主催のベンチャーフェアでの講演を目的に来日した。その出版記念パーティーに、僕は光栄にも呼ばれたので、カジュアルな格好で参加した(幸い本の訳者の植山周一郎さんと弟の源一郎さんと個人的に親しくしているので、その関係で以前にもお話しをする機会を得ている。感謝です)。
会場は恵比寿のゼストの3Fだ。メキシカン風の木造の建物で、3Fの真ん中はパティオのようになっている。見上げると、夜空が広がっていた。リチャードは、黒のジーンズに黒のポロシャツのいでたちで、ひげを奇麗にはやして、長髪をなびかせながら、颯爽 と登場した。
リチャードは、スピーチと乾杯の後に、多くの方と挨拶したり、談笑したりしていた。また、写真の撮影をしたり、本のサインをしたりで、大忙しであった。彼は、来ていただいたゲストのために、終始笑顔で応対していた。基本的に、ものすごくやさしい方である。
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暫くして、リチャードを探しに行ったら、何と奇麗な女性とツーショットになっていた。基本的に、女好きである!?(~~;;
まわりの人が、挨拶に行きたいと思っても、二人はバーカウンターに前かがみでもたれかかり、背中を向けた格好になっていたので、他の方が割って話しをすることができ ない。皆、「リチャードだからしょうがないや」と、気分を害する様子も無くなぜか納得して、のんびりとカジュアルに楽しんでいた。
僕は、以前リチャードと30分ほど一対一で話したことがあった。2年前にべ.ルファーレで行われたヴァージンコーラの記者発表の時であった。オープニングまで時間が あったので、VIPルームに行ってじっくりと話しをした。
ビジネスの考え方、人のマネジメントのポリシー、なぜ新たなベンチャーに取り組むのか、など意見交換した。僕の印象は、『とても人間愛にあふれた子供の様な純粋な人』であった。言葉の端々に、優しさがにじみ出ており、話をしていてとても気持ちが良かったことを覚えている。
実は、僕の最初のリチャードとの本格的な”出会い”は、その5年前のハーバードでのヴァージンのケースであった。リチャードが16才のときに、レコードの通信販売から始めたヴァージンがどのように大きくなったかが書かれており、とても興奮しながら読んだことを記憶している。
ヴァージンという強烈なブランドネームを創りあげて、優秀なスタッフを巻き込み、権限と責任を委譲して、インセンティブを与えて、任せてしまう。そして、組織はなるべく小さく設計して、一人一人のやる気を喚起するやり方は、今のグロービスにも生きている考え方である。
そのケースの分析では、僕がリチャードの立場であったなら、ヴァージンアトランティックをやらずに、エンターテイメントやソフト系のコンテンツとデリバリーにフォーカスする戦略を採用したであろうというのが結論であった。その理由は、エアラインは規模の経済性が働き、資金を大量に必要として、しかもヴァージンの良さである小さな組織を維持しきれないからであった。
その点を、リチャードに聞いてみたら、「独占を許すことは良くない。選択肢を多くの方に提供すべきであり、その違ったやり方を僕は提供したい。だからヴァージンアトランティックをやるんだ」という趣旨の答えが返ってきた。
エアラインを始めたことによって、リチャードはヴァージンメガストアとヴァージンレコードを売却して、資金を調達した。一方、ヴァージンアトランティックをやらなければ、ヴァージンはハチャメチャな面白味を持てなかったかもしれない。
どちらが良かったのかは、僕にはわからないけど、リチャードはいつも楽しそうであることは確かである。そういうリチャードを僕は好きである。