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キャンパス候補地めぐり@会津磐梯山

投稿日:2004/07/06更新日:2019/08/26

「山の中にフルタイムの大学院キャンパスをつくること」。それがグロービスのビジョンの一つである。

つまり、現在ある東京、名古屋、大阪のシティキャンパスに加え、将来的には、山の中に全日制の大学院をつくろうと考えているのだ。シティキャンパスでは、夜間と土日に経営学を学べるので、会社勤めしながら通学できるのがメリットだ。事実、多くの優秀な方々にご活用いただいている。

ただ、このままでは、海外からの学生を招聘したり、宿泊型のエグゼクティブプログラムなどを実施しにくい。

そこで、山の中にフルタイムキャンパスをつくり、海外からも受講生やファカルティ(教授)を招聘し、英語でMBAのプログラムを提供したいと考えている。当然、これらのプログラムは、シティキャンパスのMBAとも単位互換でき、同等の価値をもつようにする予定だ。この「山の中の大学院」というビジョンは、大いなる長期計画により成り立っている。そもそも、発足時から30年という長いスパンで計画を立てているので、それだけ大きく考えることができるのであろう。

30才で始めて、既に12年経過した。20年目を迎える8年後には、キャンパスの立地が決まり、建設も始まり、アジアから学生が招聘されつつあるようにしたいと思っている。そして、発足30年目の18年後には、『アジアNo.1のビジネススクール』として位置付けられていることを目指している。そのために、今頑張っているのだ。

その長期ビジョンに向け、週末に家族旅行も兼ねて、キャンパス候補地を探索してきた。当初の予定地は、軽井沢近辺だ。東京からのアクセスもいいし、文化的香りがあるので、学生も飽きることが無い。浅間山も雄大で、四季折々の自然も美しい。難点は、許認可がとりにくいことだ、と言われた。また、海外から飛行機でのアクセスもあまり良くないし、東京以外のシティキャンパスである大阪、名古屋、福岡(予定地)からもちょっと不便だ。当初は、僕の山小屋(参照コラム:山小屋計画)からも近いので、「このようなライフスタイルもいいかな」と思っていたが、キャンパス建設までまだまだ時間があるので、候補地を日本全国に広げ、他の土地も見てみることにしたのだ。

そして、今、福島県の会津の磐梯町に来ている。「あ〜、会津磐梯山は〜、宝のや〜ま〜だ〜」の民謡『会津磐梯山』で馴染みのある、あの磐梯山の麓の町である。そこに家族6人と友人の家族と共に来ている。なぜ磐梯町かというと、星野リゾートの星野佳路社長に、「軽井沢もいいけど、福島県は国際空港があって磐梯山も綺麗だし、許認可も比較的に楽だから、キャンパス予定地には、いいよ」と言われたからだ。

星野社長には、前回のグロービス・クラブ(グロービスの受講生を対象としたセミナー)でスピーチをして頂いた。彼は、山梨県小淵沢のリゾナーレを傘下におさめ、福島県会津のアルツ磐梯スキーリゾートを引き受け、そして直近では、北海道のアルファトマムリゾートの再生を手がけている。リゾナーレを見事V字回復させて、アルツ磐梯のスキー客も増やして東北No.1にさせるなど、再生引き受け後の打ち手が、見事に利いている。年齢も僕の1つ上で近いし、お子さんを含めた家族ぐるみでの付き合いをはじめている。彼はファミリー企業のオーナー社長、僕は起業家だ。立場が違うが、リゾート経営の改革型リーダーとして、彼のことを一目置いて見ているのである。

その彼が、そこまで言うのならばということで、今回の磐梯町訪問になったのだ。金曜の夕方、早めに会社を退社し、水泳のレッスンを受けている長男と次男を会社の帰りにピックアップして、帰宅した。すぐに、チノパン、ポロシャツに着替え、帽子をかぶり、サングラスをかけて、リュックサックを背負い、スニーカーを履いて、東京駅に向かった。東北新幹線で郡山まで行き、JR磐越西線の会津ライナーに乗り換えて、夜9時前に磐梯町に着いた。

翌朝、星野社長の案内で、散策をした。僕は、隣県の茨城県出身ということもあり、小学校の遠足や、中学校時代の水泳の合宿でも来たことがあり、会津にはある程度の土地カンはある。「この地域は、有名な地名が多い。猪苗代、会津若松、五色沼、ラーメンで有名な喜多方、白虎隊の飯盛山、そして磐梯山など。ただ、効果的な観光資源の開発がなされていないので、リゾート客を呼べないでいる」、というのが星野社長の見解だ。

アルツ磐梯は、もともと1987年のリゾート法の施行とともに、磐梯町と不動産会社、大手航空会社、大手信託銀行などが関与して創られた第三セクターの大規模リゾート地だ。全部で300万坪もあり、磐梯山の中腹までが敷地となっている。ゴルフ場や、スキー場、教育・研修施設もあるし、温泉スパもある。既に1100億円程度が投下されたという。ただ、何でも揃っているがため、逆にコンセプトもあいまいになっている印象を受ける。だからこそ、経営が行き詰まってしまい、星野リゾートに再生を任せることになったらしい。

この地は、猪苗代湖を南に、磐梯山を北に抱き、景観は抜群に素晴らしく、且つ、風水的にも良いところだ。水も綺麗らしい。散策の途中で、栄川(えいせん)酒造株式会社の酒造工場にも立ち寄った。アルツ磐梯ができたときに、水が綺麗だということで、工場を移転したらしい。そこで、吟醸、大吟醸、うめさけを試飲した。どれもうまい。 特に、「うめさけ」が美味しかった。「どうして梅酒(うめしゅ)と呼ばないのか?」と聞いたら、「梅酒」は、焼酎で造るが、「うめさけ」は日本酒だ。「梅酒」と差別化するためにネーミングを変えたらしい。ほろ酔い気分で、うめさけを一本買い、散策を続けた。

星野リゾートが、アルツ磐梯の経営に関与してからの戦略を練リ始めた。先ずは冬のスキー客獲得に戦略を集中させること。夏はコンセプトが明確化するまで、資源を使わないことにした。いわゆる、「資源の集中」である。スキー客のリピーターを増やすことと、ファミリー客を増やすことに専念した。特にスキーのインストラクションに力を入れ、スキーの上達を体感させることによってスキーを楽しんでもらい、その結果リピートしてもらうことを狙った。

更に、カレーライスのサービス(美味しさ)保証を導入した。以前、僕が星野社長に、グロービスのサービス保証の話をしたことがあった。つまり、「グロービスでは、受講生が全部受講して、クオリティーに不満を持てば、無条件で全額受講料の返済を受けられる制度がある。これは、パワフルな顧客満足の制度だよ」と説明し、グロービスで使っているサービス保証に関するサイドリーディングを送ったことがあった。それからすぐに星野社長は、アルツ磐梯でカレーライスのサービス保証を導入した。つまり、「カレーライスを食べて、もしも不満があれば、全額返しますよ」、というサービスだ。大変なパブリシティを得ることができたらしい。

そして、これら施策の実行を一任されている総支配人は、グロービスの修了生である。僕も彼とは以前より面識があった。アルツ磐梯に到着時、玄関で迎えてくれた。予期していなかったので、とても嬉しかった。東北地域のスキー客が前年比軒並みダウンする中で、彼が中心になり、施策を実施することによって、唯一アルツ磐梯だけが2%も上げることができた。過去10年間で初めての回復だ。

さらに、コンセプト委員会では現在、夏の客数を上げるのにどうすればいいかを、日夜考えているらしい。「リゾート開発で一番重要なのは、その地方の固有である魅力を発見し、わかりやすくまとめて、うまく伝えることだ。皆同じであっては、誰も来てくれない。」、と星野社長は、力説した。

明日は、慧日(えにち)寺に向かい、山岳修行が行われた滝を見て回ることにした。慧日寺というのは、平安初期に徳一という僧侶が創建したお寺で、一時期は800人を越える修行僧を抱える一大拠点だったのだ。徳一という僧侶は、空海や最澄と同世代で、双方の巨匠と論争した記録が残っているらしい。その徳一が開基した慧日寺の修行が行われた地域が、実はアルツ磐梯の中にあるのである。そこには、18もの滝があり、少し歩くと天然の露天風呂があるらしい。そして、その上には、磐梯山が聳え立つのである。

その平安期の徳一というビジョナリーが、なぜこの磐梯という土地を選んだのか。そしてその自然を活用した慧日寺という僧侶養成学校(つまりキャンパス)をどのように創り、発展させたのか。徳一は、そのときに何を考えのか。修行僧は、滝に打たれながらどのようなことを瞑想したのだろうか。そして、露天風呂に入りながら何を感じたのだろうか。
僕は、そういったことに大いなるロマンを感じてしまうのだ。しかし、その僧侶の一大拠点も、最後は戦国時代末期に、伊達政宗によって滅ばされてしまう。そして、そのまま歴史の中から消えてしまったのだ。空海が創建した高野山も、織田信長に危うく焼き尽くされるところだったが、何とか難を逃れて現在に至っているとのことだ。

これからも、「キャンパス候補地めぐり」という名目の、日本全国の山々の散策をしたいと思っている。さて、どこがいいのだろうか。楽しみだ。読者の皆さんも、キャンパス候補地として良いところがあれば、是非教えていただきたい。
ソウルで体調を崩して風邪を引いてから、ガラガラ声が治らない。全く休む暇も無く、体力も消耗しているので、治せないでいるのだ。水泳のマスターズ大会もちょうど1ヵ月後だ。早く治さないと、練習もままならない。明日以降も続くハードスケジ ュールに備え、今晩は、早めに床に入ることにした。平安時代のロマンに思いを馳せながら。

会津アルツ磐梯にて

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