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シアトルで思った事

投稿日:2004/04/12更新日:2019/08/26

2ヶ月前のことである。「ビル・ゲイツ氏も参加するプライベートな会合を企画している。主に欧米のハイテク系のCEOが50名程度集まる会だ。Yoshiも特別に招待するから来ないか?」と企画者から誘われた。

米Forbes(フォーブス)誌やFORTUNE(フォーチュン)誌で、欧米のCEOが情報交換を目的に開催しているプライベートなセッションの記事を読むことがある。「ダボスのような大きな会合はある程度はわかったけど、ハイテクのCEOが集まるプライベートな会合とはどういうものだろうか?」と持ち前の好奇心が膨らみ始めた。そして、次の瞬間には、「OK。行くよ」と軽く返事をしてしまっていた。

ということで、今、僕は、シアトルにいる。ベイエリアに行く用事もあったので、好都合だ。夜のうちに、サンフランシスコから移動して、ホテルに入り、朝起きて受付けを済ませた。参加者リストには、アバイヤ、ベリサイン、チェックポイント、コンピューター・アソシエイツ、JDSユニフェース、リアルネットワーク、シマンテック、シンビアンなど、そうそうたる企業のCEOの名前が並んでいた。ベンチャーキャピタルでは、トライデント・キャピタルやウォルデン・インターナショナルなどのCEOも来ていた。

コンファレンスが始まり、米国アバイアの会長兼CEOであるドナルド・ピーターソン氏や米国ベリサインのCEOストラットン・スクラボス氏のスピーチを聞いた。その後、グループに分かれて、ディスカッションを行い、ネットワークランチを楽しんだ。そして、午後には、ビル・ゲイツ氏の話をきいた。ゲイツ氏の話を直接聞くのは、今回が3回目である。最初が、91年の春にハーバード・ビジネス・スクール(HBS)のキャンパスで。2度目は、96-97年頃、ニュービジネス協議会の会合で。そして今回が3度目だ。

ビル・ゲイツ氏やマイクロソフト関係者には、あらかじめお詫びしておくが、率直に感じたことを書くしかない。ゲイツ氏のスピーチは、いつ聞いても面白くないのだ。どうも、ワクワクしない。今回は、プライベートなセッションということもあり、彼の真ん前に座り話を聞くことができた。聞いた印象は、彼の本を読んだときと一緒だ。知識があって賢く、深く考えているとも思うが、刺激を受けたり、啓蒙されたりはしない。淡々としているのだ。

その中でも印象に残ったのは、ものすごく達観しているという点だ。今回、僕が興味を持っていたのは、2点だ。ヨーロッパでの訴訟とリナックスの件だ。ヨーロッパでは、独占禁止法違反で数百億円の支払いを命じられたばかりだ。その件に関しての質問には、慌てることもなく、怒りを表すことも無く、こういうこともあるさ、という態度であった。基本的には、ウィンドウズの進化を消費者が望んでいるので、その方向に進めるしかない。マスコミに対しても、90%の報道は、常にマイクロソフトに好意的であったから多少悪く言われても気にすることは無い、という感じであった。

最近、中国政府やアジア各国政府のリナックスを推奨する動きを脅威としないのか?という質問にも、全く動じない。世界でシェアを伸ばしているOSは、マイクロソフトとリナックスだけだ。ソラリスもアップルコンピューターもシェアを落としている。つい先日、経営陣の合宿があった際に、リナックスは話題にも上がらなかった。以前までは、リナックスが脅威だ、と口をすっぱくして言う必要があったが、今は皆リナックスへの対抗策を全員が認識しており、しかるべきアクションをとっているので、危機感を醸成する必要も無いところまで来ている。従い、あまり心配する必要は無い。という感じである。

スピーチを聞き終わった後の「スピーチ後感」(読後感をもじった造語だが)は、あまり気持ちのよいものではなかった。10年以上前にHBSで聞いたビル・ゲイツ氏のスピーチのことを思い出した。HBSでゲイツ氏が喋った後に、級友に感想を聞いたら、「つまらなかった。あまり好きになれない」というコメントが返ってきた。一方、ウォレン・バフェット氏が来たときの印象を聞いたら、みんな「最高だ。面白い」という反応であった。

さて、2人の間で何が違うのだろうか?2人は仲が良いと聞いている。家族ぐるみのお付き合いとも聞くし、カードゲームのブリッジもよくするらしい。では、なぜこんなにも差が出るのであろうか?僕は、1つのことに気が付いた。ゲイツ氏は、スピーチの際、知っていることを喋ろうとする。一方のバフェット氏は、人々を楽しませようとしているのだ。

ゲイツ氏は、自分の知識がどれだけあり、どれだけ深くまで考えているのかを誇示するかのように喋っている。そして、‘僕らは強くて、決して負けない‘ということを宣言している印象がある。従い、聞き終わった瞬間の印象は、‘ワクワク感‘ではなくて、相手をブルブルとふるえさせるような印象を与える。ゲイツ氏のスピーチ内容や方法は正しいと思うし、多くの若手起業家は、当然、みなそのように誇示して喋りたいと思う。ただ、世界でトップクラスの市場価値を持つ独占企業の会長が喋ると、相手に恐怖感的のようなもののみを与えてしまうのだろう。

一方、バフェット氏は、違う。質問に答えるたびに会場から笑いが起こるのだ。内容は、悪を正すような正義感があって、しかもユーモラスで面白いのだ。英語で‘White Knight‘という言葉がある。日本語では‘白い騎士‘と訳されている。バフェット氏は、みんなを救済する‘白い騎士‘の役割を金融界でも担っているのだ。だからこそ、何らかの問題があったら、バフェット氏のもとに相談に行くのである。僕も、どちらかというとバフェット氏のことが好きである。僕も、スピーチの際は、ある程度ゆとりを持って、明るく楽しく、聴衆に語りかけるよう喋れるようになりたいものだ、と常日頃から思っている。

そうこうするうちに、夕方になった。キャビアとシャンパンでのネットワーキングカクテルパーティが開かれた。積極的に多くのCEOに話しかけるべく努力した。必ずしもこういう場所は得意ではないが、自らをプッシュしてなるべく多くの人と話をした。

カクテルパーティの帰り際、同じフロアに部屋がある参加者とエレベーターの中で会話した。「この会合をどう思うか?」と僕が、質問したら、「普段ゆっくりと会えない人とじっくりと話をする機会があった。ストラットンと20分間だけでも話せたことが、他が全て無駄であったとしても、来た甲斐があったと言えるものさ」という答えが帰ってきた。僕は、「そうだよね。今回の企画者が僕らのために、数多くのCEOを集めてくれていると考えたら、こんな便利なこと無いよね」、と切り替えした。

本日、早起きして、このコラムを書いている。これから、コンピューター・アソシエイツとJDSユニフェースのCEOとのスピーチ・対談の後、帰国である。今回は、ハイテク企業のCEOとのディスカッションを通じて、グローバルな考え方に触れることができた。ま、最初のデビューということだろう。誰もグロービスのことを知らない。先ずは知られることから始まり、徐々に仲間に入れてもらえるように努力をしたい。そのために、今回はスタンフォード大学でもスピーチをして、この会にも参加をしている。焦らず、確実に一歩一歩前進したい。

僕が今年立てた新年の抱負は、全部で7つある(そのうちの1つが、先のコラムのとおり、水泳でマスターズに参戦することである)。水泳以外に知識編として2つある。その1つが、テクノロジーの理解を促進することだ。投資案件にも深く関与して、インダストリーとテクノロジーのマッピングをした上で、グローバルなキーパーソンに会い続けることを目標にしている。投資先企業の中にも、シリコンバレーに拠点がある企業が2社ある。米国に販売している会社も数多くある。そのような会社のサポートをできるよう、少しづつでも人脈を広げる努力をしたい。

ちなみに、抱負の知識編のもう1つは、中国である。今年は、中国とテクノロジーを深めることに努力をする年にしたい。と語ってみたものの、既に今年も4分の1が終わってしまっている。おそらく、このような目標や抱負などは、達成することが目的ではなく、意識して継続してやりつづけることに意義があるのだと思う。

そろそろ、シアトルの朝も明けてきた。今回は、サンフランシスコもシアトルもホテルにプールが無かったので、泳げなかった。そのせいもあってか、時差の調整がうまくできていない。早く帰って、思いきり泳ぎたい気分だ。

シアトルのホテルにて

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