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ダボス会議参加報告(その1)

投稿日:2004/01/27更新日:2019/08/26

新年早々に欧州出張が決まった。今回は、全行程11日間の長丁場だ。訪問地は、スイスのダボス、チューリッヒと英国のロンドンの3箇所だ。今回は、ダボス会議の日程に合わせて以下3つの目的で行くことになった。

1. 欧州の金融中核都市であるチューリッヒ、ロンドンで、ファンドの投資家に対して投資状況の説明をすること。 
2. YEO(Young Entrepreneurs' Organization)、LBS(ロンドン・ビジネススクール)でスピーチを行い、それぞれPRとリクルーティング活動をすること。 
3. そして、ベンチャーキャピタル事業のパートナーであるApaxの方々と情報交換をすることである。

通常の出張目的と大差は無いが、今回の目玉は、何といってもダボス会議への初参加と、欧米メディアの取材を受けることだ。

今年の目標は、「知る人ぞ知るグロービス」から「誰もが認める良いグロービス」への転換である。積極的に様々な会合に顔を出して、取材やスピーチに応じ、グロービスの良さを世界の人々に知っていただくことに注力したいと思っている。

1月20日(火)に成田からチューリッヒ行きの飛行機に乗り、12時間のフライトの後、チューリッヒ空港でダボス行きのバスに乗った。ダボスまでの道のりは、一面銀世界である。窓からは、山あり、湖あり、川あり、森ありで、とても綺麗な景色を楽しめる。3時間バスに揺られて、夕方ダボスに着いた。さらにワゴン車に乗り換えて、やっとホテルに着いた。相当に古い、小さなホテルである。少しがっかりしたが、すぐに気を取り直して荷物をほどき、その日はのんびりと過ごした。幸いインターネットにはアクセスできた。

翌朝、時差ぼけで朝早く起きた。ダボスは雪である。タクシーでダボス会議の受付会場に向かった。当然のことながら時節柄セキュリティーはかなりタイトである。受付でヒューレットパッカード(HP)社からiPAQというPDAを渡された。ダボスでは、様々なセッションが同時並行で開催されていて、参加者はこのiPAQを使ってそれぞれ参加したいセッションにサインアップできるようになっている。

いよいよダボス会議が始まった。朝一番のセッションは、"Setting the 2004 Agenda: Technology”を選んだ。パネリストには、米国の3COMやアカマイのCEOが参加していた。皆、コミュニケーションスキルは抜群に高い。続いて午前中2番目のセッションでは、"Setting the 2004 Agenda: The World Economy”を選んだ。パネリストには、メリルリンチ・インターナショナルの会長やLBSのローラ・タイソン学長など蒼々たるメンバーが名を連ねていた。

僕は、このセッションの間にもう二つのミーティングに参加していた。一つは取材前の打合せ、そしてもう一つは、ニュー・アジアン・リーダー(NAL)とのミーティングである。出たり入ったりでめまぐるしい。

特に取材前の入念な打合せは重要である。今年の方針である「積極的にグロービスの良さを世界に知ってもらう努力をする」に則り、広報活動には今まで以上に注力をすることになった。打合せの冒頭で「本日11時40分から2つのインタビューを入れた。BBCラジオの収録と、BBC Worldのテレビ生出演だ」と告げられ、一瞬にして時差ボケのだるさが消え去った。テレビへの単独生出演。それも、世界的なネットワークを持つBBC Worldだ!!一気に緊張感が高まった。

今回の出張のハイライトがいきなりやってきたようなものだ。ダボスのメイン会場であるコングレス・センターを出て、雪道を歩き、BBCが間借りしているホテルに向かった。そこには、機材が置かれていて、仮設スタジオの状態になっていた。記者やスタッフが出たり入ったりしていた。落ち着く間もなく、いきなりラジオのレポーターが来て、取材を始めた。その間5分間ぐらいである。

テレビの方は、雰囲気を出すために、屋外の2Fのベランダで雪が降る中、立ったままインタビューに応じるというセッティングになっている。僕は、コートとマフラーという出で立ちである。「なぜ生出演なのか?」を聞いてみた。どうもこういうことらしい。BBC Worldは、普段の通常番組の合間に、ダボスの期間中のみ特別に2-3分間のインタビューを断続的に入れるという番組構成になっているようである。僕の前には、OECDのヘッドが世界経済の方向性に関してインタビューを受けた。

雪の中で待つこと10分、いよいよテレビへの生出演だ。昨年受けたメディアトレーニングを思い出しながら心の準備をした。そして、いよいよ本番だ。今まで横に立っていた可憐な女性が、急にニュースキャスター特有のハリのある強いトーンで喋り始め、僕に質問を投げかけてきた。僕は、一生懸命に答えた。矢次早に次々と質問を投げかけられては必死で答える。その繰り返しである。わずか3分間程度のことだったがとても長く感じられた。そして、ニュースキャスターが最期に、「BBC World from Davos」と、まとめて終わった。ヤッター、終わったー!!内容はともあれ、自分なりに達成感があった。関係者にお礼をし、仮設スタジオを後にして雪道をダボスの本会場に戻った。充実感で一杯である。

少しくつろいだ後、ランチが始まった。スピーカーは、ビル・クリントン元米国大統領である。ビル・クリントン氏は過去のスピーカーの中でも最も評判が高かったと聞いていた。だからこそ是非一度生で聞いてみたいと思っていた。中身はさしさわりのない内容であったが、喋るのは抜群にうまい。あのスピーチを聞けば誰もが魅了されるであろう、と納得できた。

午後は、NALのミーティングを行い、3時からは、"Setting the 2004 Agenda:Geopolitics”を選んだ。若干36歳のグルジアのサーカシビリ新大統領が冒頭にスピーチをした。同氏は、キエフの大学を出た後、コロンビア大学での法律の修士号を取得して、ジョージワシントン大学でPh.D.を取得している。ソ連崩壊後に、独立国家共同体(CIS)諸国がどのようになり、その中でどのように専制が進んだか、また今後のグルジアの再生に向けての自身のビジョンを熱く語っていた。同氏も英語力とコミュニケーション能力が非常に優れている。これからの政治家やビジネスマンには、世界に対して発信する力というものが要求されるであろうと痛感した。

このセッションには最初から最後まで参加できたので、簡単に中身を紹介することとする。セッションの目的は、どの地域がパワーを持ち、どのように世界を動かすかを議論することである。参加国は、ロシア、米国、中国、イラン、英国(中近東スペシャリスト)という構成だった。サーカシビリ大統領以外のパネリストは、皆各国の地政学の研究者であり、政府の外交に関してアドバイスする立場にある。モデレーターはなぜかロイド社の会長である。恐らく民間の立場で世界の紛争をよく把握していなければならない立場にあるからであろう。

パネルディスカッションは、様々な視点があってとても興味深い。特にロシアのパネリストが分析をしたパワーに関する考察が面白い。

パワーは、現時点では、4つに分解できる。
・ 軍事力及びそれを活用する意思 
・ 経済力 
・ ソフトパワー(情報力、文化力、倫理観など) 
・ そして、エネルギーである。

それらを分析すると、圧倒的に米国が優勢である。欧州・日本は下降気味。中国・インドは上昇。ロシアは下降したが下げ止まり、これから上がっていくだろう。一番被害が大きいのが、中東である。近年パワーと言う側面では、壊滅的な打撃を受けた、と。

イランの学者は、今後の地政学的な動きは、主にモロッコからアフガニスタン・カシミアにかけて起こるであろうと言っていた。皆ソフトパワーの重要性にも言及していたのは、興味深かった。

質疑応答の時間には、会場からソフトパワーの提唱者であるハーバード大学のジョセフ・ナイ教授が質問をするというおまけつきである。本当に参加しがいのある内容になっていた。面白かった要因の一つには、彼らは皆政治家ではないから、ポリティカルな側面を気にせず好き勝手に言えたこともあっただろう。

ただ、日本人として寂しいのは、日本のプレゼンスが全く無いことである。日本はパワーとしては全く評価されておらず、ただ単に米国追従型のモデルとして扱われていた。中国・インドのプレゼンス向上とは対照的だ。欧州各国も国としての見られ方はなく、フランス、ドイツ、英国という言葉は殆ど聞かれなかった。

日本人としてどういう行動をすべきかを考えさせられる初日であった。

2004年1月21日
ダボスにて

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