引き出しの片隅から、ハーバード時代に書きなぐったビジネス・アイディアの記録がでてきた。キャンパスの芝生に寝転がり、いろいろなビジネスを空想しながら書いたものだ。
30以上考えたビジネスアイディアの中から、最終的に事業計画書まで書き上げたのは、結局二つの事業だけであった。ひとつは、今携わっているグロービスの事業で、もう一つがパソコン通信事業だった。
その「落書き」によると、ビジネスパーソンに特化したパソコン通信事業として、ネットワークを創って、電子出版やソフトのダウンロードを行い、通信販売を実施し、スポンサーをつけて広告を打ち出し、マーケティングリサーチを行うような、会員データベースを活用した事業などを考えていたようだ。
その当時はお金もなかったので、パソコン通信事業を立ち上げても、資金的に続かないのではと思い、結局断念してしまったことを今も記憶している。もしもその事業を手がけていたら、AOLがコンピュサーブを追い抜いたように、ニフティーサーブを追い抜いて、インターネットにも進出していたかもしれない。あるいは、もしかしたら資金が持たずに、結局倒産していたかもしれない。今となっては、確かめようがないことだけれども、考えるだけでもワクワクする話だ。
その事業コンセプトの発展型として片隅に書かれていたのが、MBAを発行するビジネス・スクールだ。つまり、パソコン通信を発端に今のグロービス・マネジメント・スクールまで手がける事業を考えていたようだ。
ふと考えた。僕がやりたかったのは、結局「ビジネスパーソンを支援するコミュニティ創り」だったのではないかと。つまり、事業形態は、経営教育を施したり、パソコン通信インフラを創ることであっても、その理念としては、生きがいを見つけたい方々に適切な環境を提供するコミュニティーを創ることではないかと、気がついた。
その当時に比べると、技術と通信インフラの進展で、インターネットを介してのコミュニティーを創ることは、誰でもできるようになったと思う。
したがって、僕は昔やりたかったコミュニティー(仲間)を創って多くの方々を支援するために、「起業家の風景」と称して、非定期的に考え方をオープンに発信することとした。
読みたい方だけがアクセスするカジュアルなものにして、小さな「パソコン通信」として、少しずつ情報発信して、ビジネス・パーソンのコミュニティーを徐々に創っていこうと考えた。
なるべく長い期間続けたいと思っているので、読者の方には気が向いたら戻ってきて、覗いてみて欲しいと思う。
コラムに関して
このコラム(起業家の風景)においては、以下の三つの原則を掲げたい。
(1)――批判的な社説にしないで、常にポジティブにものごとを捉えたい。
社説やコメントを読むと、「日本人は国際感覚に欠けている」、「日本の会社の問題点は…」とか「若者の最近の風潮は」という、知ったかぶりの批判的論調が目立つ。とても気が滅入るし、読んでいても楽しくない。「起業家の風景」では、こういう論調を一切とらずに、常に、ものごとをあるがままに捉えて、ポジティブな面にフォーカスをあてて、考えを組み立てていきたいと思う。
(2)――社会への提言ではなく、自分の身の周りの出来事をもとに自らが何をすべきかを中心に捉えたい。
「政府は減税すべきだ」、「自民党は、財政再建よりも金融システムの維持をすべきだ」などという政治家や評論家かぶれの政策提言的な論調はとらない。とても偉そうだし、実行を伴わない提言ほどむなしく感じるものはない。
「起業家の風景」では、常に身の周りの出来事から、身の丈にあった視点で、自らが実行できる範囲でメッセージを送りたい。
(3)――一方通行ではなく、双方向のコミュニケーションを心がけたい。
一方的な論調ではなく、必ず双方向のコミュニケーションとしたい。
▼Step 1:コラムの掲載
▼Step 2:Viewerからの意見(Mail: columns@globis.co.jp)
▼Step 3:代表的な意見を次週までにコラムに掲載する