ロジックツリー、ピラミッドストラクチャー、イシューツリー・・・。これらは、いわゆる「論理思考」において、頭の使い方のツールとして紹介されているものです。
私自身、こうした思考技術のトレーニングの場に立つようになってから既に10年以上が経ちますが、昔と比べて関連書籍や動画も増え、この手のツールの認知は圧倒的に高まっていると感じます。
もちろん、それ自体は良いことなのですが、一方でそれによって仕事が改善しているのか、と言えば、それは極めて心許ない状況だと思います。一言で言えば、「勉強はしているけど、定着しきっていない」。その中途半端な状態によって、かえって仕事が進まなくなっている、という話もよく聞きます。
変なカタカナ用語を振り回すようになったり、キレイな図などの小細工はできるようになったが、あまり本質的な議論ができていない・・・。そんなイケてない状況に身に覚えがある方も多いことでしょう。
では、なぜこういう状態に陥ってしまうのでしょうか。その背景には、「考え方のクセ」の存在があります。つまり、多くの人が抱える「考え方のクセ」というのは、そうそう簡単には抜けない、ということです。
たとえば、直感的に思いついたことにとらわれてしまい、それ以外のことは全く目に入らなくなってしまう、抽象度の高いキレイな言葉を使って中身のないことをそれらしく語ってしまう、とか・・・。
こうしたクセは、長い時間を掛けて職場でのサバイバルを経て体に刻み込まれてきたものなので、そう簡単に治るものではありません。付け焼き刃的な知識だけでは到底太刀打ちできないでしょう。どれだけ「勉強」しても、本質的に仕事が変わらない理由はここにあります。
では、どうすればよいか。それは、「勉強」から「トレーニング」へ舵を切ることです。ここで言う「トレーニング」とは、「適度なプレッシャー」×「フィードバック」×「反復」という公式で成立します。
プレッシャーは思考力を奪うので、身に付いてしまった悪いクセが表に出やすくなります。それを露わにした上で、その場で的確にフィードバックする。そして、気付きを得て、自覚を持ちながら修正する努力をする。その過程を何度も繰り返すことにより、ようやく勉強した内容が本番でも使える状態になっていくのです。
そういう観点で、冒頭に書いた論理思考に関して言えば、一般的には「勉強のし過ぎ」であり「トレーニング不足」という状況なのかもしれません。良い上司に恵まれて、「職場がトレーニングとして機能している」というような幸運な人以外においては、本やスマホを置いて、トレーニングの場を自ら求めることが必要でしょう。
バットの振り方に詳しくなっても、ヒットが打てるようにはなりません。勉強には熱心で、多くのツールは知っているけど、本質的に仕事は何も変わっていないという方、そろそろ本格的なトレーニングに足を踏み出してみませんか。