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【日経コラム】トップが1カ月休む会社

投稿日:2017/08/10更新日:2019/04/09

「夏休みは最低2週間とってほしい。できるなら連続で、少なくとも1週間は連続で休んでほしい」。創業以来、社員にはこうお願いしている。理由は明白だ。夏の間は旅に出て見聞を広めたり、ゆっくり読書したりして、英気を養ってほしいからだ。暑い夏に他の季節と同じペースで仕事をすると、疲労が増し体を壊す原因になりうることも長期休暇を奨励する理由である。

ある起業家が「社員に夏休みをとらせないために、決算期を8月末にした。ノルマを与えて、夏休み返上で働いてもらうんだ」と真顔で言っていたのには、ビックリした。僕とは真逆の考え方だからだ。「休まずに働きなさい」と言うトップよりも、「どんどん休みなさい」と言うトップの下で、社員は働きたいものであろう。

実際、グロービスでは多くの社員が2週間の休みをとって海外に行く。彼らからは「ものすごくリフレッシュした」「仕事にさらに一生懸命取り組もうという気持ちになった」という声が伝わってくる。社員の心身の健康や会社への満足度の向上のためにも、夏休みをしっかりと取得させることは重要だと心から思っている。

何事も率先垂範するのが僕のやり方だ。僕も毎年8月の1カ月間は夏休みをとると決めている。もちろんメールはすべてチェックするし、必要に応じて電話会議やテレビ会議などで意思決定に参画する。だが、原則として会社に出勤しない。トップが会社にいないことが「夏休みを取ることを推奨している」という強いメッセージになると思っているからだ。

「社長が1カ月もいなくて大丈夫か」と感じる読者の方がいるかもしれない。だが、今まで問題は発生しなかったし、今後も問題ないと思う。理由は「複雑系の考え方」をとりいれた主体的な組織運営を行っているからだ。

複雑系の組織とは、「ビジョン・ミッション・基本戦略を徹底的に共有し、各部門・各チーム・各人に権限を持たせ、各自が自由闊達に主体的に動きながらも、全体としてみれば秩序だって運営されている組織」である。

これが、グロービスが目指す最も理想的な組織のあり方だ。社員がみな好き勝手にバラバラに動いているように見えるが、実は秩序がある組織なのだ。複雑系の組織をつくるには、たゆまぬ努力が必要となる。

まずは、優秀な社員を採用する必要がある。次に、徹底的に育成する必要がある。グロービスのプロフェッショナル職は、大学院修士号の取得が必須となっている。そして、各自がやりたい仕事ができる組織配置をしたうえで、ビジョン・ミッションや基本戦略などを徹底的に共有する。会議体で大枠の意思決定をして、各自の役割を明確に認識したら、後はコミュニケーションをとりながら必要に応じて軌道修正すればよい。

言うは易しだが、実行は難しい。だが、この複雑系の組織ができたら、結果的にトップの役割は最小化される。トップの役割は突き詰めてみたら次の3つのみだと思う。

1つ目がビジョンに基づき意思決定して、結果に責任を負うこと。2つ目が会社に関係する企業・人々の満足度を高めること。3つ目が理念を浸透させ、個のやる気が喚起されるような組織をつくっていくことだ。

適切な意思決定して、関係する人々が満足すれば、後は複雑系の考え方で、組織は自律的に動いていくものなのだ。1カ月ぐらいトップが不在でも、会社はまわるものなのだ。

さて、そういうわけで今、僕は夏休み中だ。子どもが小さい頃は、山小屋で一緒に遊んでいた。小学校に入ると囲碁の特訓の付き添いをした。今、子どもは12歳から20歳だ。今年は次男と五男が受験なのであまり遠出はできないので、浅間山のふもとの涼しい山小屋で、読書や本の執筆をしたいと思う。

※この記事は日経産業新聞で2017年8月4日に掲載されたものです。
日本経済新聞社の許諾の元、転載しています。
 

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