※この記事は日経産業新聞で2016年9月23日に掲載されたものです。
日本経済新聞社の許諾の元、転載しています。
プロバスケットボールのBリーグが開幕した。僕の故郷、水戸市を拠点とする茨城ロボッツも24日に青森ワッツとアウェーで対戦する。ホーム水戸での初戦は10月1日だ。
日本のバスケットボール界は企業チーム主体のナショナルリーグ(NBL)と、完全プロのTKbjリーグが激しく対立した。国際バスケットボール連盟(FIBA)が見かねて日本代表チームを世界大会から締め出すほどだった。だが、日本バスケットボール協会の川淵三郎前会長(現エグゼクティブアドバイザー)のリーダーシップでその争いにも終止符が打たれた。
初年度のBリーグはB1、B2ともに18チームのスタートとなる。チームの成績、観客動員数、売上高、アリーナの収容人数などの条件で、B1とB2に振り分けられた。
茨城ロボッツは審査の結果、B2スタートとなった。前身のチームが2年前に経営破綻した。昨シーズンは成績、観客動員数ともに最下位だった。仕方が無い。今シーズンから新たに生まれ変わるのだ。
僕が茨城ロボッツの共同オーナー兼取締役になったのは今年の4月だ。川淵氏との出会いがきっかけだ。オーナーに就任した後、4月と5月にホームとアウェーでそれぞれ1試合、ロボッツを観戦した。ロボッツは弱く、観客の入りも寂しかった。
今年5月のシーズン最後のファン感謝イベントで、僕は4つのことを宣言した。(1)スポンサーの倍増、(2)観客数の倍増、(3)B1ライセンス取得、(4)B2リーグを制覇してB1昇格――だ。
それからというもの、僕は故郷の水戸に何度帰ったことか。経営チームと合宿も重ねてきた。7月1日にホームが茨城県つくば市から水戸市になり、事務所も移転した。チーム名も「つくばロボッツ」から「茨城ロボッツ」に変わった。
スポンサー集めのために企業に出向き、何度頭を下げたかわからない。水戸市や茨城県の経済団体でスピーチを繰り返し、茨城ロボッツの認知度向上のためのイベントを開き、黄門まつりにも参加し、駅前では行き交う人にビラを配った。茨城ロボッツの垂れ幕を下げてもらうために百貨店に依頼してまわるなど、まさに奔走してきた。水戸市とも何度も協議して、建設予定のアリーナがB1ライセンスをクリアできるように懇願した。宣言(1)と(2)、(3)は何とかなりそうな気配がしてきた。
そして、重要なのは(4)のチームが強くなることだ。シーズンオフには選手獲得に奔走した。説得するために選手と夕食をともにしたこともあった。今シーズン、選手は2人を除き9人が入れ替わった。新監督や選手の皆さんとコミュニケーションを密にとってきた。
茨城ロボッツのコーチと選手にお願いしたいのは1つだけだ。人々を魅了するような、ガッツあるプレーをしてほしい。結果として勝っても負けても、熱意ある一生懸命なプレーが人々を引き付けるのだ。魂のこもった気迫あるプレーで茨城県民の熱量を上げてほしい。
1日のホーム開幕戦は水戸市の高橋靖市長も来てくれる。ファンサービスのために、開幕戦だけは無料で茨城ロボッツのチームカラーであるブルーのTシャツを全員に配ることにした。ホームを真っ青に染めあげて、チームと観客が一体となって戦いたい。
今シーズンにどれだけスポンサーを集め、観客を呼べるのか。そして新たなB1への昇格に必要なライセンスを取得できるのか。そしてB2を制覇できるのか。4つの宣言を実現するには、選手・監督・経営スタッフはもちろんのこと、地域コミュニティ、企業、そして市民など、多くの力が必要だ。
実力は最下位からのスタートとなる。新生ロボッツがどれだけ水戸・茨城を盛り上げられるのか。壮大なチャレンジが今、始まる。