※この記事は日経産業新聞で2016年8月12日に掲載されたものです。
日本経済新聞社の許諾の元、転載しています。
8月上旬に水戸市で開かれた「第56回水戸黄門まつり」に参加した。高校生のとき以来、実に35年ぶりだ。金曜日夜の千波湖花火大会で始まり、土日には水戸駅前の目抜き通りの「黄門さん通り」が歩行者天国となり、山車や盆踊り、みこしなどが披露された。通りの両脇には食べ物や玩具などの屋台が立ち並び、屋外コンサートが開かれ、とてもにぎわっていた。
小学校時代からずっと楽しみにしていた地元の祭りに久しぶりに参加しようと思ったのは、当然懐かしさもあるが、最近僕が手掛けている様々な地域プロジェクトも理由の1つだ。4月に経営参画したプロバスケットボールチーム「茨城ロボッツ」が祭りに参加するから、様子を見に行きたかった。
僕が発起人となり2月に始動した、水戸の中心市街地再生を目指す「水戸ど真ん中再生プロジェクト」の関係者の方々にあいさつする目的もあった。当然土曜日の夜は、中学校の同窓会が開かれ思いっきり飲み明かした。
水戸を出てから35年、故郷に関わることが多くなった今、茨城のことを再度ゼロから勉強することにした。茨城のことを徹底的に調べるなかで面白いことに気が付いた。茨城は結構「イケている」のだ。僕が気が付いた茨城の「へー」は次の7つだ。(1)北関東・東北・甲信越の中で最大の人口を有する。京都や広島より人口が多い(2)農業出荷額が北海道に次いで全国2位(3)工場立地件数・面積が全国1位(4)研究所の機関数が全国1位(5)イワシ・サバの陸揚げ全国1位(6)平均宅地面積が全国1位(7)県民所得が全国4位で、神奈川、埼玉、千葉より豊か――。
つまり、茨城県は、農水産業・工業・研究開発で全国1位。住環境は広く快適で、とても豊かな県なのだ。まさに、「へー」だ。
そして、僕が次にやると決めたのが、茨城県の44市町村を全て訪問することだ。僕は県北・県央地域には土地勘がある。だが、鹿島アントラーズがある鹿行地域、つくば近辺の県南地域、古河・結城の県西地域には、あまりなじみがない。夏休みに茨城のビーチを堪能しながら、全ての市町村を訪問することにした。
訪問してみると、僕が高校生だった時とは茨城が大きく変わっていると理解できた。例えば茨城の観光名所の1つとなっている牛久大仏。世界一大きな大仏としてギネスブックにも登録されているが、施設の開園は1993年と僕が水戸を出た後だ。茨城観光のもう1つの大きな柱、ひたちなか市の国営ひたち海浜公園も開業は91年のことだ。
もちろん日本三大藩校の弘道館や日本三名園の偕楽園、大洗などは引き続き観光名所として人気だ。ただ、大洗が、近年観光名所となっている最大の理由は人気アニメ「ガールズ&パンツァー(ガルパン)」の舞台としてだ。
水戸黄門まつりが開かれた週末は、水戸近郊のホテルは全く予約が取れなかった。理由は黄門まつりではない。毎年夏に国営ひたち海浜公園で開催される「ロック・イン・ジャパン・フェスティバル2016」だ。このフェスに、水戸市の人口に匹敵する20万人以上が参加するという。
まさに茨城が進化しているのだ。僕が育ったころは高度成長期の時代だった。大規模プロジェクトとして、東海村周辺の原子力施設、鹿島港近辺の臨海工業地帯、つくば万博から始まった研究学園都市などが目白押しだった。今や、つくばエクスプレスが敷かれ、北関東道も完成し、茨城空港もできた。躍動的に進化していることがわかる。
地域の祭りに参加して改めて人の熱気やエネルギー、そして地元で育まれた絆を感じることができた。このポテンシャルを地方創生に結びつけられるよう、僕も微力ながら水戸・茨城を応援したい。