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競泳日本躍進の秘訣、経営者育成に生かそう

投稿日:2016/08/10更新日:2019/04/09

※この記事は日経産業新聞で2016年8月5日に掲載されたものです。
日本経済新聞社の許諾の元、転載しています。

きょう8月5日はリオデジャネイロ五輪の開幕日だ。地球の反対側で活躍する日本選手の応援のために、寝不足の日々が続きそうだ。僕は競泳選手だったから、どうしても競泳に注目してしまう。僕は中学校時代、五輪出場を目指す水泳少年だった。1984年のロサンゼルス五輪出場を目標に掲げ、「五輪」にかけて「五厘刈り」に頭を丸めていたほどだった(笑)。

当時の日本競泳のレベルはとても低かった。ロス五輪で競泳のメダル獲得はゼロに終わった。次の88年のソウル五輪では、現スポーツ庁長官の鈴木大地選手が100メートル背泳ぎで金メダルを取ったものの、チーム全体でみれば日本と世界との差は大きく、惨敗であった。

ところが2000年代に入ると日本の地位は一気に上がる。象徴的なのが04年のアテネ、08年の北京の両五輪で北島康介さんが100、200メートル平泳ぎの2冠に輝き、メドレーリレーでも日本がメダルを獲得したことだ。それ以来、日本の競泳陣の充実ぶりが際立っている。

今や萩野公介、瀬戸大也の両選手は世界の個人メドレーを引っ張るだけでなく、自由形やバタフライなど個別種目でもメダルを取れる位置にある。金藤理絵選手は200メートル平泳ぎで世界記録を出して優勝する可能性があり、星奈津美選手も200メートルバタフライで金メダルを狙える位置にいる。さらに16歳の新星、池江璃花子選手も大きな潜在力を持つ。なぜこれだけ飛躍したのだろうか。

考えられる理由の1つ目が練習環境が整ったことだ。特に屋内プールが普及するなどハード面での施設整備が進み、1年を通して競泳の練習ができるようになったことが大きい。僕が育った水戸では以前は温水プールが1つしかなかったが、今やルネサンスを筆頭に、数多くのスポーツ事業体が屋内プールを所有し、選手コースを作るようになった。

2つ目の理由が指導者のレベルが上がり、科学的な指導を行っていることだ。精神論や練習量だけを求めるのではなく、科学的な泳ぎ方や練習方法を指揮し、大会で勝つために適切なコーチングをする指導者が育ってきた。北島さんを育成した平井伯昌コーチがその一例だ。

3つ目の理由が五輪選考のレベルと透明性を格段に高めて、徹底的に競争させたことだ。選考会の決勝で派遣標準記録を突破し、原則2位以内に入ることが五輪派遣要件となった。一発勝負で非常に明快だ。準決勝でいくら標準タイムを破っても、決勝で2位以内に入って標準記録を破らなければ、五輪には出られないのだ。

今年の選考会の準決勝では、北島さんが標準記録を破る泳ぎをみせた。決勝でも2位に入った。だが、決勝で標準記録を破れなかったので五輪出場を逃し、引退することになった。本番で確実に力を出せる選手を選ぶという日本水泳連盟の方針は徹底している。厳格な基準に従って選ばれた選手たちは、出たからには最低でも決勝に残ってメダルを取るという強い意識を持つ闘う集団になった。

リオ五輪の次は、いよいよ20年の東京五輪が控えている。鈴木スポーツ庁長官が競泳復活の先例をもとに、スポーツ界全体の改革を推し進めてくれることを期待したい。

日本競泳を躍進させた要素は、実は経営者育成にも応用できると思う。第1にビジネススクールを各地でつくり学ぶ環境整備を行い、第2に指導者を育成し科学的経営手法を導入し、第3に透明性の高い選定基準を設けて経営者予備軍を徹底的に競争させることだ。

リオ五輪における日本チームの健闘を祈念する。そして、それらの成功事例が様々な分野に共有され、日本全体の改革・発展につながることを願っている。重要なのは学びの環境、指導者と科学的手法、そしてレベルを上げた選考基準による競争だ。頑張ろう、ニッポン!

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