ROIC(Returnoninvestedcapital)
企業が投下した資本に対して本業でどれだけのリターンを生み出せたかを示す指標。日本語では通常、投下資本利益率という。日本ではファイナンスに関するリテラシーの高まりとともに、特に今世紀に入って注目を浴びるようになってきた。
ここで分母は、ΣI(ただし、Iはネット投資=(投資−減価償却費)+Δ運転資本)となり、企業が誕生してからのネット投資(固定資産や在庫等への投資)の総和となる。
この分母をB/Sの右側(貸方)からみると、有利子負債(D)+株主資本(E)となる。すなわち、買掛金などのコストがかからない負債を除いた、コストのかかる資金調達額の合計となる。これをCapitalemployed(CE)、日本語では使用(総)資本と呼ぶ。
ICとCEは一致するため、ROIC(投下資本利益率)=ROCE(使用資本利益率)となる。ROICはP/Lの数字とB/Sの数字を用いており、収益性と効率性を合わせ持つ指標といえる。
分子として用いるのは、NOPAT(Netoperatingprofitaftertax)もしくはNOPLAT(Netoperatingprofitlessadjustedtaxes)が多い。いずれも株主と債権者に属する利益であり、それゆえROICは、株主と債権者から投資した資本をもとに、どれだけ彼らに帰属する利益を残せたかという指標といえる。財務会計よりもファイナンス的な発想の指標であり、総資産額を分子とするROAなどとは対照的である。
ROICの分子の利益として、営業利益やEBIT(Earningbeforeinterestandtax)、税引後純利益などを用いる日本企業は多い。ROICの分子として何を用いているかについては要注意である。
なお、ROI(Returnoninvestment’投資利益率)もROIC同様、投下資本利益率と呼ばれることがある。しかし、ROICが全社的視点から企業価値向上に関連して使われるのに対し、ROIは個別投資案件に使用されることが多く、また、「広告のROI」といったように、さらに狭い範囲で用いられることもある。
ただし、ROIをROICの意味で用いるケースもあり、また、分子として用いる利益もまちまちであり、前提や文脈を正しく把握することが重要である。