購買力平価(Purchasingpowerparity)
購買力平価は、基準時点の為替レート×A国の物価指数/B国の物価指数で示される指標で、A国において一定価格で購買できる財が、B国ではいくらで購買できるかを示す交換率のことである。基準時点において1ドル100円、基準時点と比較した日本の物価上昇率が0%、米国の物価上昇率が10%と仮定すると、購買力平価は100×(100/110)=90.9円となる。このとき、実勢為替レートが1ドル95円であれば、日本の為替レートは実際の購買力に比べて過小評価されているということになる。
購買力平価は、投機などによって大きく変動する為替レートよりも、商品価格を基準にするため安定しており、生活の実感に近い値が求められるので、各国の経済規模や賃金水準などを比較する際にわかりやすいとされる。また、長期的にみると為替レートが購買力平価から一方的に乖離することはないので、為替レートの長期動向を予測する場合にも有効である。実際に、過去をさかのぼってみると、購買力平価は為替の実勢レートのトレンドを概ねよく表していることが多い。
したがって、自社が生産拠点の海外移転などを考えており、人件費や部品・原材料の調達コストなどを分析し、コスト競争力が持続しそうかどうかを検討する場合などに、購買力平価を用いるとよい。また、並行輸入など内外価格差を用いたビジネスを行っている場合、実勢レートと購買力平価との差が起きている原因を分析し、為替レートの長期的なトレンドを押さえておくと、内外価格差が狭まってしまったときの対策を予め用意しておくことができる。
なお、消費者物価指数や卸売物価指数など、どのような物価指数を用い、基準時点をいつに定めるかによって、購買力平価が異なってくる点に注意する必要がある。
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