有意(Significance)
統計学用語。「偶然にそのようなことが起こる可能性は低く、統計学的に意味がある」の意。帰無仮説の下、観察結果が極端な異常を示していないかで判定する。
帰無仮説とは、ある仮説(作業仮説)を否定する仮説であり、その帰無仮説が否定されれば、元の仮説が真であることにつながっていく。たとえば、「ある条件Xを満たす人間は、40歳時における収入が高い」という仮説を持ったとする。このケースでは帰無仮説は「ある条件Xは40歳時における収入と無関係である」となる。もし調査・分析の結果、この帰無仮説が正しい可能性が高いとすると、元の仮説は否定される(無に帰す)可能性が高いことになる。元の仮説が正しいためには、この帰無仮説は棄却される必要があるのである。
帰無仮説を棄却するための有意水準(危険率)は、ビジネスでは一般に10%(0.1)以下、もしくは5%(0.05)以下が用いられることが多い。「危険率5%で有意である」といった表現をする。極めて高い精度を必要とするような工学分野などではより厳しい有意水準を用いる場合もある。
ただし、この危険率の目安は確固とした根拠に基づくものではなく、起こりにくい確率の目安として慣行的に使われているにすぎない。ビジネスで10%や5%という数字が用いられるのは、一般に、人はあることが起こる確率が10%や5%を下回ると「起こりにくいことだ」と感じるという経験則による。
たとえばコイン投げで、なぜか表が連続して出ているとする。何回ぐらい表が続いたら「怪しい」と人は感じるだろうか。経験的には4〜5回で怪しいと思う人が多い。4回連続して表が続く確率は0.5の4乗で6.25%、また、5回連続して表が続く確率は0.5の5乗で3.125%である。こうしたことから、「起こりくいことが目の前で起こっていると感じる確率」の実感値として10%や5%という数字が採用されるのである。
なお、有意水準を満たしたからといって、それはあくまで「確率的に起こりにくい」というだけであり、帰無仮説が完全に否定されたということを示すわけではないという点には注意を要する。
重回帰分析では、候補となる各変数についてP値を計算し、変数1つ1つが統計的に意味があるかどうかを検討する。P値があらかじめ決めた有意水準10%もしくは5%よりも大きい時には、「大きい」と判断され、説明変数には採用しない方がよいとされる。
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