リバース・イノベーション(ReverseInnovation)
新興国から生み出した低コストの技術や製品を先進国でも活用すること。近年、グローバル企業の新興国での市場拡大を機に広まりつつある。ビジャイ・ゴビンダラジャンが提唱したコンセプト。
たとえば、P&Gは、ブラジルで開発した使い捨ておむつや生理用品の技術・製品を、アメリカをはじめとする先進国にも逆輸入することで低所得者層への市場浸透を図った。トイレタリー商品で言えば、水を使わなくても泡立つ石鹸やシャンプーは水不足に悩む新興国向けに開発されたものだが、水不足に悩む先進国の一部地域でも応用可能である。
そもそも近年の新興国向けの製品は、「安かろう悪かろう」ではなく、「低価格でまずまずの機能」を満たす必要がある。それゆえ無駄を削ぎ取った製品設計が求められることが多く、また、性能や仕様の根本からの見直しを余儀なくされることも多い。そこで知恵を絞って生まれた製品は、十分に先進国の一部顧客のニーズを満たしうるのだ。近年では、先進国への逆輸入を前提に新興国での技術・製品開発が行われることも多い。
ゴビンダラジャンは、リバース・イノベーションを組織内で起こすには、マインドセットの変更が不可欠としている。それらは以下のようなものだ。
・権限委譲とローカル市場の重視。
・リバース・イノベーションに取り組む人材やそれに投じる資源は、その大部分を、ローカル市場を基点に管理しなければならない。
・ローカルのチーム(小さな機能横断型の起業家的組織)に損益責任を与えなくてはならない
・どの製品を開発し、どのように生産、販売、マーケティングするかを決める権利をローカルのチームに与えなくてはならない。
・ローカルのチームが自社のグローバル資源を活用し、その支援を受けられる体制にしなくてはならない。
・グローバルでの展開を検討する際には、まったく新しい応用や、さらなる低価格化なども検討する必要がある。また、利益率の高い製品とのカニバリゼーションもある程度は容認する。これがないと先進国での普及が進まず、コスト競争力もつかないからだ。
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