イノベーション(Innovation)
物事の新しい切り口、新しい捉え方、新しい活用法およびそれらを創造する行為。新しいアイデアから社会的意義のある新たな価値を創造し、社会的に大きな変化をもたらす人・組織・社会の変革を指す。
イノベーションは、20世紀を代表する経済学の碩学ヨーゼフ・シュンペーターが唱えたことでも有名である。シュンペーターはもとの論文では、イノベーションではなく、「新結合」という言葉を使っている。
つまり、イノベーションとは、いきなり目の前に現れるものではなく、それまで知られていたことを巧みに組み合わせ、新しい価値を生み出すことにその主眼があるという考え方だ。
ビジネスの文脈では、イノベーションとインベンションの差異を認識しておくことが重要であり、イノベーションはインベンションを、製品イノベーション、プロセス・イノベーション、ビジネスモデル・イノベーションなどを通して、キャッシュにつながる価値に変えていくことを指す場合が多い。
実際、多くのケースでインベンションをした人物や組織と、それをイノベートしてキャッシュ化した人物・組織は異なっている。
たとえば、ガソリン自動車を最初に発明したジークフリート・マルクスの名を知る人はほとんどいないだろう。それを商業的に軌道に乗せたのは、販売店網を構築し、企業化したゴットリープ・ダイムラーやカール・ベンツである。
さらにオートメーションという生産プロセスのイノベーションを起こして自動車を庶民の手に届くものにしたのはヘンリー・フォードであり、GMのアルフレッド・スローンは、品揃えやマーケティングでさらにビジネス上のイノベーションを起こし、フォードを抜き去ってGMを世界一の自動車会社へと押し上げた。
ヘンリー・フォードにしてもアルフレッド・スローンにしても、彼らのやったことは今から見たら当たり前のことである。しかし、後世から見たら当たり前のことを、誰よりも早く採算の取れる形で実現するのがアントレプレナーシップである。そしてそのカギは、それまで多くの人が見逃していた結合に気づき、仮説検証しながら、それを推し進める実行力にある。
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