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MBA経営辞書「複層的交渉」

投稿日:2012/03/05更新日:2019/04/09

複層的交渉(MultilayerNegotiation)

交渉当事者が争点に対する直接の意思決定権を持っておらず、別の誰かの決定を待たなくてはならないという構造を持つ交渉の形態。

組織対組織として見れば一対一の交渉であっても、交渉の現場に出てくる人物には決定権がなく、常に「自組織に持ち帰って決める」というワンクッションが間に挟まる交渉と言える。

この場合、複雑になるのは、組織にとっての利得や規範とは別に、交渉者および意思決定権者それぞれの個人にとっての利得や規範を探る必要があるという点である。

たとえば、組織としても、意思決定権者にとっても満足すべき提案を投げているのに、交渉当事者がイエスと言わないケースだ。

仮に、このまま妥結してしまうと妥結内容はともあれ交渉過程の印象として相手の言いなりに押し切られたかのように見えてしまうため、意思決定権者からの評価が悪化してしまうのを恐れて動かない、といった要因があるのだとすれば、彼/彼女の顔が立つような何らかの追加譲歩、あるいは意思決定権者とのコミュニケーションなどが必要となろう。

自分が複層的交渉の「意思決定権なき交渉当事者」となった場合は、交渉をうまくまとめるのに他者の「力を借りる」という方法も念頭に置いておきたい。たとえば、交渉相手に強く主張する際に「私はともかく社内が納得しないのですよ」と言うのは、心理的負い目を軽減したり、相手のペースをいったん断ち切ったりするのに効果がある。

組織で働くビジネスパーソンにとって、何らかの新しい仕組みを作るときなどは、特にこの交渉スキルが重要となる。そのためには、複雑な利害関係者の構造を把握しキーパーソン、ライトパーソンを探り当てるスキルと、関係者が一致できるポジティブなビジョンを描き、協力を取りつけられる力が重要となる。

▼「MBA経営辞書」とは
グロービスの講師ならびにMBA卒業生など、幅広い分野から知を結集して執筆された、約700語の経営用語を擁する辞書サイト。意味の解説にとどまらず概念図や具体例も提示し、マーケティング、ファイナンスなどの分野別に索引できる。今後、検索機能ほかサイト機能の追加を行う一方、掲載用語を1000語程度まで拡充した上でサイト上でのご意見の収集ならびに監修の実施を通じた更なる精緻化を図り、グロービス編著のベストセラー書籍『MBAシリーズ』と併読いただける書籍として出版を予定している。

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