機長症候群(Captainitis)
リーダーの言うことに押し切られて議論や反論を止めてしまい、好ましくない結果を招いてしまうこと。
もともと、飛行機の機長が間違った判断をしたにもかかわらず、それをサポートする副操縦士らが機長の誤った考えを翻意させることができず、結果として墜落事故にいたってしまったというケースからこの名がついた。
機長症候群が起こる理由としては、1つには、強制力が働くためにリーダーの言うことに従わざるを得ないことがある。しかし、これは必ずしも機長症候群の最も重要な問題ではない。より重要なポイントは、リーダーが優秀な場合、往々にして、フォロワーが自律的に考えたり、リーダーと議論することをしなくなり、結果として、盲目的にリーダーに追従した形になってしまいがちなことである。
調査によると、(結果を残してきた)優秀なリーダーだけではなく、斯界の権威や第一人者の指示に対しても、人は自分自身で意思決定することを放棄しやすいことが示されている。
「できるリーダー」と周りから言われる人間は、どんどん自分でアイデアを出し、次々と意思決定を進める人間が多い。しかし、彼/彼女が優秀であればあるほど、そうしたスタイルは、実は部下を「考えない」方向へと向かわせ、スポイルしている可能性がある。
特に会社において上司は、権威と同時に権限を持つ立場の人間である。機長症候群がもともと生じやすい素地があるといえる。
そうしたことを理解したうえで、自分の影響力を正しく把握し、権威は保ちつつも、フォロワーを思考停止に追い込まないコミュニケーションスタイルが求められている。
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