印象管理の誘惑(Temptationforimpressionmanagement)
人に好印象を与えようとする発言や行動が、かえって良くない結果をもたらしかねないこと。
ビジネスパーソンにとって、人に好印象を与えることは重要である。しかし、それが行きすぎると、逆効果となることがある。その典型が、「一貫性のある人間」として見られたいという心理へのこだわりだ。これは立場固定とも大きく関連している。
人は、行動の方針をあちこち変える朝令暮改の指導者より、一貫した態度を示す指導者を好む傾向がある。それゆえ人は、周囲の関係者に首尾一貫した人物であると見られたいという欲求を持ち、あらかじめ決めた事柄やストーリーに固執するモチベーションを持っている。一貫性のある人物であるという「印象」を管理したいという衝動である。
その時点ではもはや合理性を欠いていると自分自身で認識していても、いったん決めた方針を変更すると、最初の意思決定の誤りに対して非難されるのではないかという恐怖や、メンツがつぶれるという忌避感から、当初方針を継続しつづけたいという意識が働いてしまうことも少なくない。
たとえば、不良債権処理の問題で、融資先の経営状態が厳しくなっているのに、銀行が彼らの事業に建て直すきっかけを与えようとして、さらに資金を貸し付けることがよくある。このとき、問題となる融資を始めたときの担当者は、後になって担当を引き継いだ者よりも、追加支援のための融資や返済条件の猶予、緩和といった選択をしがちである。そして、いったんそうした追加支援の方針が定まると、その後さらに経済環境が悪化しても、方針の撤回はしにくくなり、貸倒損失の規模は拡大してしまうのだ。
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