利得(Payoff)
人を説得する際のレバーの1つで、金銭に換算しやすい便益のこと。
規範を利用した説得が難しい場合、最終的にものを言うのは、相手が納得できる利得を、自分自身が得るものとのバランスもとりながら、提供できるか否かである。
特に、相手が一個人ではなく、企業である場合には、担当者も、組織や株主に対して説明責任を果たさなくてはならないという事情から、その傾向は高くなる。
一般に、規範に比べると、利得はシンプルで分かりやすい。「○○をすれば△△万円のリターンが期待できる」「□□を手伝ってくれればしかるべきポストで君を優遇しよう」といった具合だ。相手がこの利益を重視して動く場合には、それを極力数値化・具体化して「利益が見える形」に落とし込むのが有効である。また、利益に関する説明は、ロジックで説明しやすいという特徴もある。
留意事項として、利得を重視する相手は、不確実性を嫌う傾向があるという点がある。100のものを100%の確率で得られる方が、200のものを50%の確率で得られるよりも、通常は高く評価される。
また、もし利益を得るどころか失う可能性がある場合、多くの人間は、同じ額を得る喜びよりも、失う痛みをより痛切に感じることが証明されている。つまり、100を失う痛みは、100を得る喜びをはるかに上回るのである。
したがって、「どれだけのメリットがあるかを正確に予測することはできませんが、まずはやってみましょう」という説得、ましてや「ひょっとしたら損をする可能性もありますが、確率的にこのくらいの利得を得られます」という説得は難しいことが多い。そのため、リサーチを厳密に行ったり、いざというときの代替案を用意したりするなど、可能な範囲で不確実性を回避する工夫をしておくことが有効である。
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グロービスの講師ならびにMBA卒業生など、幅広い分野から知を結集して執筆された、約700語の経営用語を擁する辞書サイト。意味の解説にとどまらず概念図や具体例も提示し、マーケティング、ファイナンスなどの分野別に索引できる。今後、検索機能ほかサイト機能の追加を行う一方、掲載用語を1000語程度まで拡充した上でサイト上でのご意見の収集ならびに監修の実施を通じた更なる精緻化を図り、グロービス編著のベストセラー書籍『MBAシリーズ』と併読いただける書籍として出版を予定している。