多数者効果
自分以外の多くの人間が積極的にある意見を支持すると、「自分の意見は彼らと違う」と思ってもなかなか言い出せず、そのうちに「自分の考えのほうが間違っているのかもしれない」と思ってしまい、考え方を変えるという現象。
集団浅慮に似た側面もあるが、集団浅慮が、自分の考え方を変えたわけではないにもかかわらず、まわりからの同調圧力に抗しきれず、積極的に反対意見を表しない結果、集団として好ましくない意思決定をしてしまうというものであるのに対し、多数者効果は、「自分だけ意見が違うのはおかしいのではないか」と疑心暗鬼になって、自分個人の意見を変えてしまうという点に差がある。
多数者効果は、悪徳商法の押し売りなどでよく用いられる手法でもある。たとえば、自分をある店に誘った友人とその店の店員、そして他の顧客グル(つまり他のお客さんはサクラ)になって、自分を騙そうとするような構図である。
実際、人は、ある同じ行動を多くの人がとっていると、疑念や危機感が薄れ、そうした「騙し」に無防備になることが知られている。その際、周りにいる人が多ければ多いほど、たとえば5人の場合よりは15人の場合の方が、その効果は強まる。まさに多数になるほど影響力は大きくなる。
特に、まわりが熱狂状態になっているような集会にいると、通常の感性が麻痺し、どんどん「洗脳」されてしまうことになりかねない。カルト的な宗教や政治団体などは、こうした熱狂状態に人を巻き込むことで洗脳することを試みる。ある種のマーケティングや人的資源管理にも、この手法は応用されている。
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グロービスの講師ならびにMBA卒業生など、幅広い分野から知を結集して執筆された、約700語の経営用語を擁する辞書サイト。意味の解説にとどまらず概念図や具体例も提示し、マーケティング、ファイナンスなどの分野別に索引できる。今後、検索機能ほかサイト機能の追加を行う一方、掲載用語を1000語程度まで拡充した上でサイト上でのご意見の収集ならびに監修の実施を通じた更なる精緻化を図り、グロービス編著のベストセラー書籍『MBAシリーズ』と併読いただける書籍として出版を予定している。