単純接触効果(Mereexposureeffect)
過去に触れた情報については、新しい情報よりも好ましく感じるという人間の錯覚。単純接触効果の原因には様々な仮説があるが、有力な仮説としては、(1)過去に触れた情報はその処理がスムーズになり、その情報処理のスムーズさを、「情報が好ましいものだったから」と脳が誤って記憶する、(2)過去にその情報に触れたことがあるため、リスクを過小に見積もる、などが挙げられている。
この効果があるからこそ、タレント事務所はタレントの露出を増やし、企業はより多くの人に到達するような広告を打とうとする。
これは営業や交渉などでも有効な心理的テクニックとなる。常日頃から接触を増やしておくと、よほど悪印象を与える接触方法でない限りは、相手は全く会ったことのない人に比べると、自分に好意を抱く。
つまり、質(接触の内容)も重要ではあるものの、量を増やすことも好意を獲得する上では非常に有効なのである。営業などでは、「努力に報いてあげないと悪いかな」といった心理(返報性)も往々にして働きがちであるし、何度も会うなかで情報交換も進むため、ますます接触頻度を上げることの効果は高まっていく。
単純接触効果は人間の自然な感情であるため、なかなか回避するのは難しい。しかしながら、会社にとって重要な意思決定を下すような場合には、多様な意見を取り入れる、あるいは、接触頻度が低い選択肢についても情報を集めるなどしたうえで、評価の基準を合わせ、本当にその選択肢が望ましいのか、より客観的な視点で判断することが求められる。
▼「MBA経営辞書」とは
グロービスの講師ならびにMBA卒業生など、幅広い分野から知を結集して執筆された、約700語の経営用語を擁する辞書サイト。意味の解説にとどまらず概念図や具体例も提示し、マーケティング、ファイナンスなどの分野別に索引できる。今後、検索機能ほかサイト機能の追加を行う一方、掲載用語を1000語程度まで拡充した上でサイト上でのご意見の収集ならびに監修の実施を通じた更なる精緻化を図り、グロービス編著のベストセラー書籍『MBAシリーズ』と併読いただける書籍として出版を予定している。