規模の経済性(Economiesofscale)
規模の経済性とは、事業規模が大きくなればなるほど、単位当たりのコストが小さくなり、競争上有利になるという効果。コストリーダーシップ戦略をとるリーダー企業にとっては特に重要なコスト低減の方法である。
規模の経済性は、狭義には、固定費が分散されて、単位当たりのコストが下がるというメカニズムを指す。バリューチェーン上で言えば、研究開発費や広告費に規模の経済性が働きやすい。たとえば、「スーパードライ」発売以前のアサヒビールは、キリンビールの6分の1程度の売上げしかなかったにもかかわらず、キリンの70%程度の広告費を必要としたという。研究開発費がコスト上重要な位置を占める製薬業界では(最近では、新薬の開発には数百億円の費用がかかるという)、国境を越えたM&Aによって、この規模の経済性を実現しようとしている。
規模の経済性は、より広義には、固定費の分散のみならず、バイイングパワーの強化による仕入れコストの低減も含む。日本で家電販売首位の座を占めるヤマダ電機などは、この大量仕入れによる売上原価低減を大きな武器として急成長した。
さらにより広義の規模の経済性には、知名度向上によるリクルーティング力の向上、サービス業などでアクセスがよくなることによる顧客の便益性向上なども含まれる場合がある。なお、すべての業界において、規模が拡大すれば規模の経済性が実現されるわけではない。逆に、コミュニケーションの煩雑化や、経営資源の分散(特にグローバル化を伴う場合)などにより、競争力が削がれるケースもあることには注意する必要がある。
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