分散型事業(Fragmentedbusiness)
分散型事業とは、アドバンテージ・マトリックス上において左上に位置する事業であり、事実上大企業のいない業界である。構造的に「大きくなりにくい事業」とも言える。通常、地域密着型の事業や、事業拡大によるコストダウンの余地が小さい事業が典型的である。たとえば、美容室業界では多種多様なプレーヤーが、立地、価格、サービスメニュー、接客、カット技術、店の雰囲気、ネームバリューなどを武器に絶対的決め手のないまま競争を繰り広げている。ファッション性の極めて高いブティックなどもこの事業タイプに該当する。M・E・ポーターはこの事業タイプを、多数乱戦業界と呼んだ。
こうした事業では、成功や収益性は、そのときどきの企業の頑張りや工夫などに左右されやすい。オーナーの資質に非常に大きく左右されやすい事業とも言える。投資規模が比較的小さいこともあって、新規参入や敗者復活が日常化しているのも分散型事業の特徴と言える。
ただし、分散型事業であっても、工夫次第で特化型事業あるいは規模型事業への転換を図ることは不可能ではない。たとえば理容業界では、QBハウスがフランチャイズ方式を活用しながら、画一的なサービスを展開し、またITに大きく投資することで、規模型事業への脱却を図った。あるいは、かつてのレストラン業界では、すかいらーくなどを筆頭に、セントラルキッチン方式を導入することで規模効果を効かせ、分散型事業から脱却する試みが見られた。
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