公平理論(equitytheory)
モチベーションや報酬に関する理論の1つ。人は、「自分の仕事への取り組みと対価としての報酬」と、「他人の仕事への取り組みと対価としての報酬」を比較し、その内容に不公平を感じる場合、公平性を感じるような状態に近づく行動をとるように動機づけられるという理論。J.ステイシー・アダムスらによって提唱された。
まず、報酬システムに関する検討を行う前提として、「従業員は自分の報酬に対する満足・不満足を他人の報酬との比較の中で認識する」ということを念頭に置く必要がある。従業員は自分が認識する出力O(Output:給与、福利厚生や仕事環境など)を、自分が投入したと考える入力I(Input:努力、能力や経験など)との比でとらえ、これを他人の出力Oと、入力Iの比と比較する。以上を式で表すと、3通りの状況が考えられる(添字pは自分、添字oは他人を表す)。
Op/Ip<Oo/Io
自分の入力に対する出力の割合が、他人の入力に対する出力の割合より小さい。
Op/Ip>Oo/Io
自分の入力に対する出力の割合が、他人の入力に対する出力の割合より大きい。
Op/Ip=Oo/Io
自分の入力に対する出力の割合と、他人の入力に対する出力の割合が同じ。
ある従業員が、Op/Ip<Oo/Ioと感じる場合、それは低報酬の状態になり、逆にOp/Ip>Oo/Ioと感じれば、それは高報酬の状態である。
公平理論によれば、Op/Ip≠Oo/Ioという不公平を感じる場合はいずれも、その人は公平性の認識が回復されたOp/Ip=Oo/Ioという状態に近づくような行動をとるように動機づけられることになる。
そして、公平性の認識が回復されるための行動とは、以下の5パターンである。
(1)入力Ipを小さくする
例えば、あまり熱心に仕事をしなくなる。
(2)出力Opを大きくする
例えば、会社の物品の窃盗などのモラルハザードに結びつくケース
(3)自分および他人の入力I、出力Oに関する認識を変える
例えば、Oとして現金給与だけでなく、様々なベネフィッツ、雇用の保障なども認識する
(4)比較対象oに対する認識を変える
比較対象を、同じ職場の人間ではなく、例えば同業他社の人間とする
(5)比較そのものから退く
仕事を(会社を)辞める