権限委譲(Empowerment)
目標を達成するために、従業員に権限を委譲すること。彼らが自律的に行動することで、組織運営のスピードを上げることを意図している。
適切な経営システムの構築は、従業員に権限委譲を促し、当事者意識、モチベーションを醸成することにもつながる。権限委譲により、小さな意思決定を各社員が少しずつ行うことによって経営を理解しはじめ、経営者のマインドを持ち、経営者の共通言語を使い始めるという効果もあるからだ。J&Jや京セラなど、大企業となったいまも分権的経営によって権限を委譲し、社員の当事者意識や経営者マインド育成につなげている企業も少なくない。
ただし、実際に多くの企業では、権限委譲という言葉ほど、効用ばかりが説かれ、実態が伴っていない言葉もない。その原因はさまざまあるが、従業員の能力や、そのためのインフラ、あるいは上司の側の心の準備が伴っていないうちにこれが行われてしまったことが大きな理由の1つと考えられる。
では、若いベンチャー企業などでは、権限委譲をどのタイミングで始めるべきだろうか。絶対的な答えはないが、極めて初期の段階は、思い切って任せてしまって、失敗したらまたもとに戻す、というのも1つの考え方である。そうすることで、人材の育成を促し、同時に権限委譲を成功させるためにはどのような経営システムが必要なのかを見極め、それを導入していくことができるからである。最初は試行錯誤になってしまうが、そこで人が育ち、良い経営システムができれば、後は加速度的に権限委譲が進んでいく。
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グロービスの講師ならびにMBA卒業生など、幅広い分野から知を結集して執筆された、約700語の経営用語を擁する辞書サイト。意味の解説にとどまらず概念図や具体例も提示し、マーケティング、ファイナンスなどの分野別に索引できる。今後、検索機能ほかサイト機能の追加を行う一方、掲載用語を1000語程度まで拡充した上でサイト上でのご意見の収集ならびに監修の実施を通じた更なる精緻化を図り、グロービス編著のベストセラー書籍『MBAシリーズ』と併読いただける書籍として出版を予定している。