カンバン方式(kanbansystem)
生産現場で、連続する工程間の仕掛在庫を最少にするための仕組み。トヨタ生産システム(TPS)でジャスト・イン・タイム(JIT)を実現するために開発された手法の1つ。
カンバン方式で、前工程はカンバン(生産指示標)を発注書として受け取り、製品を加工する。加工後、加工品はカンバンとともに後工程に渡される。この時、カンバンは納品書の役割を果たす。後工程は受け取った加工品を使ったら、そのカンバンを前工程に戻す。カンバンが戻ってきた前工程は、再び次の加工をする。この一連の流れで、工程間の仕掛在庫を最少化することができる。
生産指示標としてカンバンを使うことから「カンバン方式」という名称が用いられるようになった。前工程のカンバンを仕掛けかんばん、後工程のカンバンを引取りかんばんとも呼ぶ。
なお、「カンバン方式」はトヨタ生産システムの一環として、大野耐一氏(元トヨタ自動車副社長)が開発した。また、MITのジェームズ・P.ウォマック等がトヨタ生産システムを研究調査して「リーン生産方式」として欧米に紹介し、日本自動車メーカーが欧米を追い抜く日が来ると、当時の欧米自動車業界に衝撃を与えた。
現在では、電子カンバンの研究も進んでいる。電子カンバンのメリットは、従来のカンバンでは存在する伝達ロスなどが改善できる、カンバン全体の総量などが把握できる、生産ボリュームの変化の対応が即座にできるといった点である。一方、デメリットには、従来のカンバンのような、現場で状況が「見える」というメリットを失うことが挙げられる。
また最近は、環境問題やCSRの考えから、カンバン方式やJITが過度になると、少量物流によるトラックなどの運行が増えCO2増加につながるといった環境問題も指摘されている。
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