ブランド(Brand)
ブランドとは、顧客と企業の共通の認識であり、また、顧客に期待を促し、それに応えるものと言える。フィリップ・コトラー教授は、「ブランドとは、個別の売り手または売り手集団の財やサービスを識別させ、競合する売り手の製品やサービスと区別するための名称、言葉、記号、シンボル、デザイン、あるいはこれらの組み合わせ」と定義している。
ブランドは具体的には、顧客にとっては、選択の拠り所や使用・経験の満足を高める機能を果たすほか、他の製品・サービスを探す手間や失敗のリスクを回避でき購買の効率が上がる、心理的な満足感が高まる、などの効用を持つ。企業にとっては、信頼を寄せる顧客のブランド・ロイヤリティを得て、安定的かつ長期的な収益基盤となるものであり、プレミアム価格の設定や競合に対する競争優位の構築をも可能にする。
我々は通常、ブランド・ネームやロゴ・マークなど、そのブランドを表現する記号、シンボルなどによってブランドを認識しているが、こうした要素のみならず、そのブランドから想起されるイメージや価値観など、さまざまな部分からブランドは形作られている。ブランドとは何かと問われたときに、それなりに知っているはずなのに、一言でうまく説明しにくいのは、こうした有形・無形の複合的な価値によってブランドが構築されているからである。
なお、このようなブランド価値は名称やロゴに最初から備わっているわけではない。ブランドが約束する一定の属性、便益、価値観、文化、歴史、パーソナリティ、ユーザー像が周囲に理解・評価されてはじめて価値が生まれる。そして、ブランド価値を正しく理解してもらうためには、企業の長期にわたる地道なブランド構築活動が欠かせない。
次回は「ブランド・エクイティ」を取り上げます。
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