β(ベータ)(Beta)
βとは、個別の株式のリスクを定量的に示した指数で、株式市場全体(マーケット・ポートフォリオ)に対する感応度といえる。たとえば、市場全体の利回りが1%変動(上昇、または下落)したとき、β=1.5の資産の利回りは1.5%変動(上昇、または下落)することが期待される。マーケット・ポートフォリオ自体のβは当然1になる。
βが1よりも大きいビジネスは、ハイリスク=ハイリターン型のビジネスであり、逆にβが1よりも小さいビジネスは、ローリスク=ローリターン型のビジネスとみなすことが出来る。ハイリスク=ハイリターン型の具体例としては、ハイテク業界などが該当する。建設や証券会社などの景気連動型ビジネスも、βは1よりも大きいのが普通である。ローリスク=ローリターン型のビジネスとしては、食品事業や電気事業など、需要変動が小さかったり、公共的性格が強かったりする事業が該当する。
同じ業界に属していても、固定費と変動費の比率を比較した際に固定費が大きな企業の株式のβは高くなる傾向にある。なぜなら、売上げの変動が利益の変動に影響を与えやすいからである。逆に言えば、大きな固定費を抱え込まず、費用を変動費化している企業のβは低くなる傾向にある。ただし、これは同じ業界で比較した場合の話であり、費用の変動費化を進めたからといって、必ずしもβが1よりも低くなることを意味しない。
また、財務レバレッジが高く、負債を積極的に活用している企業のベータも高くなる傾向がある。それは、B/S左側の資産(キャッシュフローを生み出すもの)のリスクが同じにも拘わらず、B/S右側の資金調達サイドにおいて、リスクを負担しない債権者の比率が増え、リスクをとっている株主が負担すべきリスクの比重が高まるからである。
次回は「CAPM(資本資産価格モデル)」を取り上げます。
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