前提(Premise)
推論の出発点となる命題のこと。古典的な三段論法では、大前提(例:哺乳類には肺がある)と小前提(例:猫は哺乳類だ)から「猫には肺がある」という結論を導き出す。
前提は、よりラフには、何かを考えるときの決め事という意味合いでも用いる。先述した「仮説」である場合もあれば、単なる約束事の場合もある。前者の例としては、「経済はこれからもしばらく停滞する」「当面は二大政党制が続く」などが該当し、後者としては、「円周率は3として考えた」「為替変動は無視できるものとして考えた」などが該当する。
ビジネスにおいて重要なのは、皆が「常識」と思い込んでいる前提を疑い、新しいやり方や商品・サービスが生まれないかを考えることだ。事実、それまでの常識を疑うことから、競合の機先を制するような新商品や新事業が生まれ、先行者利得を実現した例は枚挙に暇がない。
たとえばマイケル・デルは、「パソコンはパソコンショップで買うものであり、電話販売には馴染まない」といった当時の常識を疑い、いわゆるデルモデルと呼ばれる、ダイレクト販売のビジネスモデルを構想した。また、検索サービスで圧倒的シェアを誇るグーグルは、それまでのWEBビジネスが前提としていた「滞留時間をなるべく長く」という常識を捨て、新しい収益モデルを作った。
常識や前提をリセットするための具体的なテクニックとしては、(1)極端な仮定の質問をしてみる(例:「価格を三分の一にすることは可能か?」)、(2)ばかばかしい質問をしてみる(例:「「なぜこんな機能がついているんですか?」「なぜこの手順を踏まなくてはならないのですか?」、(3)否定形を作る(例:「アイスクリームは容器を必要とする→容器を必要としないアイスクリームはできないか?」などがある
次回は「仮定」を取り上げます。
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