退職給付会計(AccountingforPensions)
退職年金に関連する会計制度。この会計制度により、運用利回りの低下などによる年金資産の積立不足の状況が明らかになる。
退職年金は、会社が従業員や役員に対して退職後に支払うものである。一般的には、社外に将来の支払いに備えて年金基金をつくり、その基金に準備額を積み立てていく形態をとる。現在の会計ルールでは、現在の年金の準備金額を意味する年金資産(PlanAsset)は、決算期末段階の時価で評価することとされている。
一方で、将来の支払いを考えたときに現在時点で準備しておくべき金額を意味する給付債務(BenefitObligation)は、将来の予測支払額を、金利をもとに設定した一定の割引率で現在価値に直して計算することとされている。
そのうえで、時価ベースの準備額である年金資産と、現在価値ベースでの準備必要額である給付債務を比較して、年金資産が給付債務を上回る場合には、年金の余剰分、つまり前払い分があると考え、その金額分を貸借対照表上に「前払年金費用」として資産計上する。逆に年金資産が給付債務を下回る場合には不足分があると考え、「退職給付引当金」として負債計上する。
つまり、年金給付についても会社の活動の一部と考え、その準備状況を貸借対照表に反映させることになっているのである。なお、この余剰額や不足額を意味する資産や負債については、実際に支払うことになる従業員の退職時点までにそれぞれ処理もしくは埋め合わせすればよいので、年金の会計ルールでは従業員の平均残存勤務年数で徐々に償却していくことになっている。
次回は「減損会計」を取り上げます。
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