一般能力と企業特殊能力
能力には、どの企業で働いても通用する能力(一般的能力)と、特定の企業でしか通用しない能力(企業特殊的能力)がある。前者は意識的に教育することが可能であるのに対して、後者は教育によって身に付けさせることが相対的に難しい。
通常、一般的能力を開発するために入社前研修や新人研修、中間管理職研修などのプログラムが整備されている。この種の教育プログラムは教室などの座学形式で一斉に集団で実施されることが多い。社会人としてのマナーや、マネジメントとしてどのようなことに気をつけなければならないのか、また実践しなければならないのかということを教える。はじめて営業担当になった人間に対して、営業の基本を教えることもこれに含まれる。こうして身に付けた能力は、別の企業組織に移ったとしても通用するものであり、市場性がある能力ともいえる。組織外へ持ち運べるということでポータル能力と呼ぶこともある。
特定の組織でしか通用しない能力としては、たとえば、ある案件について誰にどのようにサポートを仰げばいいか知っているというものがある。あるいは、その会社の商品知識もこれに含まれよう。これらは他の組織に行けば通用しなくなるものであり、その組織の中で仕事をする中で身に着けていくものである。
次回は「テクニカル・スキル、コンセプチュアル・スキル、ヒューマン・スキル(カッツの3能力)」を取り上げます。
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