ポジショニング学派(positioningschool)
経営学者のヘンリー・ミンツバーグは著書『戦略サファリ』の中で、戦略の形成過程に着眼し戦略論を10の学派に類別した。その中の1つであるポジショニング学派は、1970年代後半から戦略形成の主流となった戦略論であり、業界分析を通して自社が競合に対して優位となるポジションを選ぶことを主眼とする。
ポジショニング学派の源流は古く、軍事学にその起源を求めることができる。それが勢いを増したのは60年代後半から70年代にかけてボストンコンサルティンググループを初めとする戦略コンサルティング会社が論文を発表し、また実践に応用してその有効性を主張し始めてからである。市場戦略や市場シェアが利益にどのような影響を及ぼすのかを分析したPIMS(ProfitImpactofMarketStrategies)プロジェクトもこの延長線上にある。
70年代後半に登場したマイケル・ポーターは、産業経済学の知見に基づきながらポジショニング学派の考え方をさらに推し進め、「5つの力」分析やバリューチェーンなど、現代でも用いられているさまざまな経営フレームワークを提唱した。ポーターの主張はその明晰さ、分かりやすさから広く受け入れられ(特に、企業の分析スタッフやコンサルティング会社、ジャーナリストなどに強く支持された)、80年代以降のポジショニング学派の隆盛に大いに貢献した。
ポジショニング学派はいまだに戦略論の中心に位置するが、いくつかの批判もある。主な批判としては以下がある。
・外部環境分析を重視しすぎており、戦略が同質化してしまう(誰が考えても似たような戦略になってしまう)
・戦略が模倣されやすい
・企業固有の強みや特徴への洞察が弱い
・そもそも外部環境を分析スタッフがすべて補足するのは難しい
次回は「ラーニング学派」を取り上げます。
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