減価償却(depreciation)
使用や時間の経過につれて、経済的な価値(将来収益を生み出すことのできる力)が減少していくような機械や建物の有形固定資産について、それを使用する全期間(耐用年数)にわたって徐々に費用としていくこと。減価償却のルールに基づいた、資産の減少分が減価償却であり、取得原価から徐々に差し引かれていく。なお、設備投資(有形固定資産)の取得原価を配分する方法のことを減価償却、無形固定資産の原価を配分する方法のことを償却という。
わが国では従来、減価償却が終了した時点で、最終的な使用後の価値である残存価額(減価償却が終了した時点での、その資産の見積額)が残るというやり方を採用していたが、2007年4月の税制改正により、償却可能限度額および残存価額が廃止された。同時に耐用年数についても、液晶ディスプレイやプラズマディスプレイなどのフラットパネルディスプレイの製造設備について、法定耐用年数が先行的に短縮された。これらの施策により、企業は毎期の減価償却費をより多く計上できるようになり、より大きな節税効果が期待できるようになった。
耐用年数については、具体的には、従来、原則として取得原価の10%を差引いた額を各期に減価償却費として配分していた。また、耐用年数経過後は、特別に取得原価の5%までは償却できることになっており、結果的に取得原価の95%までを減価償却費に計上していた。今回の改正では、この償却可能限度額および残存価額を廃止し、残存簿価が1円(備忘価額)になるまで減価償却費として計上できることになった。
なお、有形固定資産であっても、その使用価値が減少しないと考えられる土地等は、減価償却の対象とはならない。
減価償却の方法としては、減価償却額が最初多くて徐々に少なくなっていく定率法と、その資産を使用している各期間が同じ金額となる定額法、生産量や活動量に応じて減価償却が増減する生産高比例法がある。
減価償却費を見る際に重要なのは、この費用は現金の支出を伴わない費用であるため、減価償却が非常に多く利益が少ない会社であっても、キャッシュフローは潤沢であるかもしれないという点である。その費用分の現金が会社の内部に留保されたという意味で、投資資本の回収と考え、自己金融効果と言われている。
次回は「定額法」を取り上げます。
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