補完財(complement)
ある製品やサービスに対して、互いに補完しあうことで消費者が効用を満たす、あるいは効用が高まる製品やサービスを補完財という。例として、カメラと写真フィルム、食パンとジャム、DVDソフトとDVDプレーヤーなどがある。
こうした関係が典型的に見られるのが、ハードとソフト(メディアとコンテンツの関係、インフラとアプリケーションの関係などもこれに近い)、機械と消耗品などである。
これらのいずれかを手がける企業は、自社の製品・サービスのみならず、補完財の市場拡大をも支援する(あるいは自ら補完財事業も手がける)ことが戦略的に重要となることが多い。たとえば、ソニーはプレーステーションの市場を拡大するため、ソフトメーカーに支援を行ったり、自らソフトの開発を手がけたりした。写真フィルムメーカーが、ミニラボ事業を手がけるのも同様の発想である。
なお、ある製品・サービスが、代替財としての影響を強く与えるか、補完財としての影響を強く与えるかは、必ずしも事前に予測できないことも多い。レンタルCDという業態は、当初、新作CDの売上げに悪影響を与えると考えられたが、実際には音楽市場を拡大する効果のほうが大きかったといわれている。
なお、経済学の世界では、一方の製品・サービスの価格が上昇すると、他方の製品・サービスの需要も増す場合に互いに補完財の関係にあると考える。
次回は「職能別組織」を取り上げます。
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