株式譲渡(stocktransfer)
特定の相手に株式を売却し、リターンを得る手法。
日本ではまだネガティブなイメージがつきまとう株式の譲渡(株式の売却)であるが、米国ではイグジットの方法として一般的に受け入れられている。株式の譲渡にはいくつか種類があるが、イグジットの際によく見られるのは、過半数もしくは(重要な決議が可能となる)3分の2以上の株式を売却し、経営権までを譲渡する方法である。株式譲渡は、何らかの事情により(たとえば起業家がまったく別の事業を始めたい、あるいはもう引退したいなど)、事業から手を引かなければならない場合にも用いられる。
株式譲渡のメリットとしては、第一に、株式公開よりも早くキャッシュを手に入れることができる点が挙げられる。したがって、起業家の事情により、早期にキャッシュを必要とする状況になった場合などにも有効である。第二に、特定の相手とのやり取りですむので、株式公開ほど事務手続や関係者との調整等で煩わされない。第三に、自分たちが経営を続けていては先行きが望めない事業でも、適切な相手に売却することにより、事業自体が立ち直る可能性がある。これにより、売却する側と買収する側、雇用者、顧客すべてにとって良い結果がもたらされる。
一方で、買い手先企業との力関係しだいでは、価格交渉において、バ−ゲニングパワ−の差により買い叩かれる恐れがある。また、事業を売却してしまった後で、生き甲斐を喪失してしまったことに気付き、後悔する起業家も多い。
株式譲渡の際には、今自分が持っている事業がどれくらいの価値があるのかを、定量的・定性的に把握しておくことが重用だ。企業の価値を算定する方法はいくつかあるが、会社の資産をベースに計算する方法、類似会社の株価を基に算定する方法、キャッシュフローをベースにした事業価値の算定方法などが多く用いられている。ある程度理論に裏付けられた企業価値を計算したうえで交渉にあたることが望ましい。
次回は「増資」を取り上げます。
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