オートメーションや人工知能、アウトソーシングの利用により、多くの伝統的な仕事が急速に姿を消しつつある。中年層は自分の仕事が定年を迎えるまで残っているのか、そして、自分の子どもが労働市場に参入する頃には仕事がまったく残っていないのではないかと心配している。
世界経済フォーラムの『グローバルリスク報告書2014年版』では、今年最も懸念される10の世界的リスクの2番目に「構造的な高失業率/不完全雇用」を挙げている。
なるほど、どこの親も口を揃えてこう言うわけである。競争の熾烈なグローバル化した現代の世界に対応できる子どもを育てるにはどうすればいいのか、と。
5人の息子を持つ妻と僕は、当然ながらこの問題を真剣に受け止めている。
大量に資料を読み、話し合った末に、僕たちは次の結論に達した。僕たちが息子たちのためにできる最善のことは、高いレベルの生命力、つまり「バイタリティ」や「立ち直る力」を身に付けさせることである、と。
十分な生命力を身に付けさせれば、子供たちは失敗に強く、変化に柔軟に対応でき、何事にも前向きな姿勢で臨む人間に育つはずだと僕たちは考えている。
しかし、「バイタリティ」や「立ち直る力」のような抽象的なものを、どうやって身に付けさせるのか。
僕たちはそれを、次の3つの重要な要素に分解した。
1.スポーツの能力
2.囲碁の試合で勝てる能力
3.英会話力と海外経験
各要素について順番に説明しよう。
1.スポーツ
これは単純なことだ。スポーツをすれば、子どもはリーダーシップやチームワーク、自己鍛錬、競争といった概念に慣れ親しむことができる。それと同時に、基本的な活力や前向さを向上させるのに役立つ。わが家では、子どもたちが小学生のときは必ず水泳に集中させる。中学生になったら、一番好きなスポーツをどれでも自由に選ばせる。また、毎冬には家族で10日間のスキー・スノーボード旅行にも行く。肉体的な強さは、人の人生の可能性を最も直接的に左右する要因である。
2.囲碁
このスキルについては、驚いた向きもいるかと思う。なぜこのスキルがこのリストに入っているのだろうか。それは、他の多くのゲームとは異なり、囲碁には運の入り込む余地がまったくないからだ。負けるときは、自分が対戦相手よりも弱いから負ける。勝ちたければ、もっと練習を積むだけである。
そしてそれが、わが家の5人の息子たち全員がしていることである。時には1日に数時間も、コンピューターで囲碁のレッスンを受けたり、コンピューターと対戦したりすることで腕を磨いている(早いうちからITに触れる方法としても役立つ)。しかし、練習するだけでは不十分である。もっとプレッシャーが必要だ。だからわが家の子どもたちは、所属する小学校を代表して、地区や全国レベルの大会に出場した。息子たちの学校は6年以上連続で、東京地区では優勝、全国区ではトップ8入りを果たし、3度の全国制覇を成し遂げている。
子どもたちは囲碁から、失敗からの立ち直り方、長期的な目標への焦点の絞り方、集中力の保ち方(囲碁の1回の試合は最高で3時間も続くことがある)といった、人生の貴重な教訓を学ぶ。囲碁は、後の人生の力の源となる、勝つことへの意欲も育てる。
日本の成功者には、天下を統一した3人の徳川大将軍から、野球界のスターであるイチロー選手、任天堂を花札メーカーからテレビゲーム・メーカーに変貌させた同社の革命的な3代目・山内溥氏(故人)に至るまで、熱心な囲碁好きが多い。
3.英会話力と海外経験
国際語である英語をマスターすると、より広い世界の扉が開ける。そのため、妻と僕は子どもたちを日本の学校とインターナショナル・スクールのどちらに通わせるべきか迷った。そして、日本の学校を選んだ。その理由は2つある。第1に、息子たちには世界市民になる前に、まずは日本人としての確固たるアイデンティティを持たせたかった。第2に、チームワークや規律といった価値観を教え込むことにかけては、日本の学校のほうが得意であるという印象があったからだ。
僕と妻は2人とも子どもの頃(妻は小学生、僕は高校生のとき)にオーストラリアでしばらく暮らした経験があり、2人とも米国の大学院に留学している。海外の学校に行けば、英語が上達するだけでなく、さまざまな文化を持つ人々と接することができ、島国的な狭い視野を広げることができる。
わが家の息子たちは必ず高校生のときに1年以上、海外で過ごし(長男は今カナダにいる)、大学か大学院のどちらかは海外の学校に進む決まりになっている。
結論
堀家の子供たちはまだ誰も働く年齢に達していないため、「堀家の3点生命力育成法」の実際の効果をしっかりと報告することはできない。
それでも僕と妻は、こう確信している。インターネットのスピードで変化し続ける世界において、大胆に、創造的に、前向きに生きるための土台を、息子たちに身に付けさせるために、僕たちは最善を尽くしていると。
あなたはどうだろうか。
あなたは自分の子どもが競争の激しいグローバル化した世界で生き抜くために、どのような子育てをしているだろうか。あなたの家の秘密兵器は何だろうか。
※この記事は、2014年4月4日にLinkedInに寄稿した英文を和訳したものです。