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21世紀の新リーダーシップ・モデル

投稿日:2014/06/16更新日:2019/09/20

世界はかつてないほど複雑になり、グローバル化し、テクノロジーによって動かされている。それと同時に、若者の失業や所得格差、気候変動といった深刻な問題に直面している。解決策はなかなか見つかりそうにない。

こうした難しい課題に対処するうえで、リーダーシップは欠かせない要素だ。残念ながら、昔ながらのリーダーシップのルールではもう役に立たない。なぜかと言えば、リーダーを取り巻く環境が変わったからだ。リーダーシップの新モデルをテーマにした世界経済フォーラム(WEF)のグローバル・アジェンダ・カウンシルでは、これらの課題――そして、それがリーダーにとって何を意味するのか――を以下の4つの最終候補まで絞り込んだ。

1.グローバル化とは国境を越えた協働を意味する

かつてリーダーは、自国内の問題だけを気にしていればよかった。ところがグローバル化により、他国のリーダーと日常的に協働せざるを得なくなった。今日、国際的な要素を含む問題はますます増加している。ユーロ危機はその一例だ。

2.さまざまなステークホルダーに対処する必要がある

リーダーはさまざまなステークホルダーと関わる必要がある。ここでもまた、ユーロ危機を例に取ろう。他のユーロ諸国の蔵相だけでなく、各国の蔵相が、国際通貨基金、欧州中央銀行、金融市場、ヘッジファンド、自国の有権者への対応を余儀なくされた。ステークホルダーがこれだけ多くなると、問題の解決は必然的に難しくなる。

3.テクノロジーの発達に応じて迅速な対応が求められる

インターネットとモバイル機器の登場により、誰もがあらゆる出来事を即座に知ることができるようになった。福島の原発が地震と津波に襲われて爆発したときのことを思い出してほしい。この事故の映像は世界中にリアルタイムでテレビ放映された後、PCやタブレットやスマートフォンで幾度となく再生された。各国の政府はもはや、危機の際に対応をじっくり練り上げている時間などなくなった。企業で製品の欠陥問題が起こった際のCEOの対応についても同様だ。迅速に対応できる態勢を整えておかなければ、オンライン・コミュニティ全体に不満が野火のように広がる恐れがある。

4.ソーシャルメディアと大衆の力

ウェブベースのソーシャルメディアが登場する以前は、「オールドメディア」が一方的に情報を流していた。それが今や、ニュースや情報は双方向的なものになった。リーダーは従来のマスメディアだけでなく、ソーシャルメディアで活動する一般の人々とも向き合わなければならない。アラブの春が示したように、ソーシャルメディアは大衆に真の力を与える可能性があるのだ。現代のリーダーはソーシャルメディアに敬意を持って対応する必要がある。

このグローバル・アジェンダ・カウンシルでは、リーダーシップの問題について数年にわたり模索してきた。そして、こう結論付けた。古いパラダイムは進化する必要がある、と。

かつて、良きリーダーには「温かい心と冷静な頭」が不可欠だと言われていた。現代のリーダーは、精神的な絆を築き、合理的な決定を下すことができるだけでは不十分である。それに加えて、複数のメディアを通じてスマートかつタイムリーなコミュニケーションを行うことができるという第3のスキルも備えていなければならない。

これは、進化の新たな一歩にすぎない。ラジオの時代には、声だけで十分だった。テレビの時代になると、総合的なイメージが重要になった。そして今、インターネットの時代を迎え、スピードと双方向のやり取りがきわめて重要になったのだ。

スマートかつタイムリーなコミュニケーションとは、幅広いチャネルを通じてさまざまなステークホルダーの懸念に国際語で素早く対処することを意味する。そうすれば、シェアやリツイート、「いいね!」を通じてそのメッセージは勢いよく広がり、危機ムードは鎮静化するだろう。

耳を傾け、理解し、導く

旧来のリーダーシップの「温かい心」の側面も進化しつつある。かつて、リーダーは支配的な階層に属する傾向があった。例えば西洋世界では、リーダーと言えば白人男性が一般的だった。この傾向が過去のものとなったのは明らかである。米国のバラク・オバマ大統領、ドイツのアンゲラ・メルケル首相、あるいは、ハーバード・ビジネス・スクールのニティン・ノーリア学長を思い出してほしい。

特定の支配集団が自分たちの価値観を押し付けることによって人々を導くことができなくなった今、リーダーは新たなスタイルを生みださなければならない。多様性に富んだ世界におけるリーダーの役割は、さまざまな集団のモチベーションや相違点を理解し、信頼関係と共通の土台を築くことである。

ハーバード大学は、リーダーシップの新旧のスタイルの違いを示す好例だ。ローレンス・サマーズ氏は2006年、科学において女性の適性に関する軽率な発言と、黒人教職員との衝突によって、嵐を巻き起こし、学長を辞任したことを覚えているだろうか。彼のリーダーシップのスタイルはトップダウンで、多様性への寛容度が低い、旧式のスタイルだった。サマーズ氏の後任で女性であるドリュー・ファウスト氏のスタイルは、それとは正反対である。慎重でそつがなく、違いに敏感だ。どちらかのアプローチのほうが本質的に優れているなどと言うつもりはないが、ハーバード大学がサマーズ氏の監督下にあったときよりも、現在のほうが平穏で安定していることは否定できない。

あなたはどう思うだろうか。あなたの国(または会社)のリーダーは、スマートでタイムリー、かつ、そつのないコミュニケーションを特徴とした、新モデルのリーダーシップの必要性に気付いているだろうか。あなたは、そうした新モデルのリーダーシップが、現時点で僕たちが直面している深刻な課題を解決するために役立つと思うだろうか。

※この記事は、2014年2月12日にLinkedInに寄稿した英文を和訳したものです。

  • 堀 義人

    グロービス経営大学院 学長/グロービス・キャピタル・パートナーズ 代表パートナー

    京都大学工学部卒、ハーバード大学経営大学院修士課程修了(MBA)。住友商事を経て、1992年株式会社グロービス、1996年グロービス・キャピタル設立。2006年グロービス経営大学院を開学。2008年に「G1サミット」を創設。2011年には復興支援プロジェクトKIBOWを立ち上げる。2016年に茨城ロボッツ、2019年に茨城放送オーナー就任。2022年にLuckyFesを立ち上げ、現在総合プロデューサーを務める。2024年よりBARKSオーナー、世界最大のPR会社の米国エデルマン社 社外取締役。

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