「今週の1語」などの執筆者であるグロービス出版局長の嶋田毅が選んだのは、「常識外れ」に着目することの大切さがわかる1冊。
『ブラックスワンの経営学 通説をくつがえした世界最優秀ケーススタディ』
井上達彦 著
今年は若干マニアックな書籍を紹介する。本書は、経営研究に携わる方を強く意識されて書かれているとは思うが、一般のビジネスパーソンが読んでも十分に面白い1冊であろう。本書の前書きにこんな旨の記述がある。「世界で最も権威のあるマネジメントの学会、Academy of Management(AOM)は、そのジャーナルに論文を載せるだけでも狭き門だが、そのうち9割が統計学的な手法を用いて検証を行った論文である。しかし、最優秀論文賞を獲得するようなトップ論文は、ケース(事例研究)がおよそ半分を占める」。 なぜこのようなことが起こるのか。それは「ブラックスワン」、すなわち、それまでの常識や一般的傾向では説明できないような「外れ値」「あり得ない現象」にこそ経営を進化させる大きなヒントが潜んでいるからだ。その一見常識外のことが起きている理由、因果の構造を丹念に解き明かすためには丁寧なケースの研究が不可欠なのである。 方法論の詳細はここでは述べないが、一般的な経営学の知識やノウハウがコモディティ化 している昨今、ライバルに差をつけるためには、常識外れの、それでいてよくよく考えると理にかなったブレークスルーが必要になってくる。ビジネスリーダーがそうしたヒントを得る上でも参考になる1冊である。 『ブラックスワンの経営学 通説をくつがえした世界最優秀ケーススタディ』、井上達彦 著、日経BP社 (2014/7/19発売)