桜が満開の春の日に、スーツ、ドレス、和装、さらには民族衣装のビジネス・パーソンが東京・麹町にあるグロービス経営大学院に集まってきた。そう、本日はグロービス東京校の入学式なのである。
午前中10時からは、英語のMBAプログラムの入学式。午後2時からは、日本語のMBAプログラムの入学式が執り行われる。午前中の学長の挨拶は英語で、午後の挨拶は日本語だ。桜が咲き誇るこの時期に新しい「創造と変革の志士」達を迎え入れられるのは、この上ない喜びだ。
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現在、世界最大規模の経営大学院は、ハーバード・ビジネス・スクールであるが、日本で最大規模なのは、実はグロービスになった。本年度初めて300人超のMBA生が入学する予定だ。英語のプログラムの過半数は、既に外国籍の学生となっていた。
一方、日経キャリアマガジン誌が選ぶMBAランキングでも、グロービスは二年連続日本一の評価を受けている。今までは、ハーバードのMBA生が世界的に活躍してきたが、これからは、グロービスのMBA生が世界に羽ばたく番だ。創造と変革の志士の皆さんには、大いに期待するところだ。
午前10時ちょうどに、英語のMBAプログラムの入学式が始まった。教室を見渡すと、欧米、アジア、中近東、アフリカ、南米から10カ国の学生が集い、とても国際的だ。学長としての、僕の挨拶が英語で始まった。
「グロービスは、アパートの一室でたった一人でスタートした。お金も無い。信用も無い。ブランドも無い。何も無い中からのスタートだった。唯一有ったのは、健康な体と、MBAで鍛えた頭脳と、そして信念だけである。それだけであった。
だが、17年後の現在、規模でNo.1となり、ランキングでも二年連続でNo.1になるに到った。これが、教育のなせるパワーだ。良い教育を受け、可能性を信じて驀進すると、多くの事が可能になる。グロービスでは皆、その教育の持てるパワーを信じている。だからこそ教育に力を入れてきた。そして、その教育への思いが、グロービスを日本のトップ・スクールへと引き上げたのである」。
学長の挨拶の次は、学生代表の挨拶である。先ずは、ドイツ出身の学生からだ。原稿を持たずに、立派な挨拶をされた。僕よりも上手いのでは、と思えてきた。次は、フィリピン出身の学生だ。彼は、フィリピンの銀行マンで、グロービスの評判を聞き、グロービスのMBAに出願することを決めたのだという。家族をフィリピンに残し、仕事を退職して、単身で来日された。東京に来てまだ5日しか経っていないという。「彼のためにも、良い教育を施さなければ」、と意を強くした。
そして、教授陣の挨拶だ。教員も国際的だ。米国、カナダ、ドイツ、フランス、インド、ポーランド他、国際性がとても高い。皆、教育に強い思いを持つ人ばかりである。
式典後、写真撮影を屋内と桜の木の下で2度行い、2階の懇親会場に向かった。会場では、一人一人に声をかけてまわった。なるべく多くの学生・教員と話したいと思い、会話を適度に切り上げては、参加者の間を縫うように挨拶をしていない方を見つけ、握手して回った。12時30分となり、懇親会はお開きとなった。素晴らしい入学式だと思った。学生と教員の方々に挨拶をして、5階にある僕のデスクに戻った。
靴を脱ぎ、立食パーティで疲れた足をほぐしながら、新聞や雑誌に目を通した。1時30分過ぎから、次の日本語のスピーチの原稿に目を通し、直前の変更を加えたりした。
そして、2時前に日本語のMBAプログラムの入学式に参加するために、1階のホールに向かった。式典が始まった。学長の挨拶があり、学生代表のスピーチがあり、教員からの一人一人のメッセージが寄せられた。英語の入学式に負けず劣らず熱い言葉がハートに響いてくる。
写真撮影をして、懇親会会場へ向かう。日本語のMBAプログラムは、英語の10倍以上の規模である。5つのセクション(クラス)に分かれて写真撮影を行い、懇親会の会場も5つに分けて開催された。僕は、5つの会場を出たり入ったりしながら、15分刻みでまわった。僕は、可能な限り家族の方にご挨拶をするように心がけた。学生の皆さんが、学びに集中できるようにするためには、ご家族の理解を得る事がとても重要だからだ。5時となり、各会場で一本締めが行われ、懇親会はお開きとなった。
僕は、一通り挨拶をした後に、自分のデスクに戻り、足をほぐしながら感慨にふけっていた。
素晴らしい学生や教員・スタッフに恵まれて本当に幸せだと思えた。グロービスの良い点は、学生・卒業生や教員・スタッフが一体となり、アジアNo.1に向かって邁進している点だと思う。大学院の評価を決めるのは、卒業生の活躍である。だからこそ、グロービスは、学生・卒業生が活躍してもらうために、最善の努力をする。教育の場は、真剣勝負だし、卒業後も関係性は続く。
一方、学生・卒業生も皆、同じ目標に向かって頑張っているのがとても嬉しい。何せ、学生もグロービスも双方が成長しないとアジアNo.1になれないのだから。いわゆる運命共同体だ。そして、その成長するプロセスを、その人生をみんなで楽しんでいきたいと思っている。
そういう点では、グロービスの良さは、教育の可能性を信じ、多くの学生の可能性を信じ、僕らもアジアNo.1になれることを信じている点だとも言えよう。その強い思いや成長願望が伝播し、固有の学風を生み出し、多くの「創造と変革の志士」を引き寄せているのだ。
次週日曜日は大阪・名古屋校の入学式だ。本日同様に朝10時から大阪校で入学式・懇親会があり、その後名古屋に移動して、名古屋校で入学式・懇親会が執り行われる。次週もダブルヘッダーだ。東京での日本語・英語のMBAプログラムばかりでなく、大阪・名古屋でもリーダーを育てるのである。
東京、大阪、名古屋から、「創造と変革の志士」たちが輩出され続けるかと思うと、とてもワクワクするとともに、心強く思える。その学生たちが、羽ばたき日本で創造と変革の嵐を巻き起こしてくれるならば、日本の未来は明るいと確信できるからだ。
東京校を出て、自宅で着替えた後に、家族とともに、靖国通り沿いの中華料理店に向かった。夕食後に、軽く桜の下を散歩して、家路に着いた。小雨混じりの花曇りの日曜日だが、気分は晴れ晴れとしていた。
2010年4月4日
自宅にて執筆
堀義人