グロービスでは年初に「新年の方針」を打ち出し、1年間その方針に基づいて行動する。1月末から3月にかけて7回に分けて実施される全社員参加型のリトリート(1泊2日の合宿)では、全社員が「新年の方針」を議論し、行動をコミットする。四半期ごとに開催される全社員参加のミーティングでも、同じ内容を繰り返しプレゼンし、進捗を確認する。
「新年の方針」で提示されたことは、創業来8~9割程度は実行されてきた。できないことは方針に盛り込まないし、盛り込まれたら確実に実行すべく全ての資源が振り向けられるのだ。
その方針を作成するためには、前年の11月頃からコンセプトを描き始め、経営会議メンバーと議論を重ね、年末年始を返上しトップが原案を書き上げ、経営会議メンバーに共有し、完成する。経営者にとって年末年始は、最も重要な方針を打ち出す時となる。
通常の会社のいわゆる「社長の年頭の辞」とは全く次元が違う重みが、この「新年の方針」にあるのだ。新年最初の出社日の朝10時、全社員が緊張感を持って集まり、固唾を飲んでこの「新年の方針」に聞き入ることになる。
2020年の新年の方針
全国、いや世界各地の600名の社員がライブやモニター越しに参加する前で、僕が「新年の方針」を語り始めた。
「さて、2020年がどんな年になるか思い浮かべてみた。まず思いつくのは東京オリンピック・パラリンピックが開催され、日本・東京が世界から注目される年になることだろう。一方、グロービスにとって2020年がどういう年になるかを考えてみると、4つの姿が思い浮かんだ」と続けた。
「1つ目は、日本No.1からアジアNo.1のMBAになる年だ。グロービスは既に日本では圧倒的にNo.1の規模を誇る。売上高においては、恐らく実質的にアジアNo.1に今年中にはなっているだろう。
2つ目は、テクノベート時代の先行利得を活かす年だ。グロービスは、テクノロジーを活用してイノベーションを興す人材を育成するため、『テクノベート』という概念を2015年に発明し、テクノベート科目群を10科目以上開発してきた。オンラインMBAには世界中から集っている。グロービス学び放題も今年中に10万ユーザーを超えるだろう。
3つ目は、シンガポールHUBキャンパスの次の布石を打つ年だ。昨年、シンガポールに海外初の英語キャンパスを設立した。しかし1つでは足りない。大きなうねりにする必要があろう。
4つ目はテクノベート時代のチャンピオンの姿を具現化する年だ。2050年の教育の姿がどうなっているかをずっと考えてきた。テクノロジーの進化により、すでにコマースではスーパー・百貨店がAmazonや楽天へ、メディアはテレビからNetflixなどに移行している。教育もテクノロジーによってチャンピオンが変わり、オンラインが主戦場になることは間違いないだろう。そうなると世界を視野に入れて勝負する必要があろう」
ここまで説明した後に、一息ついて、「新年の方針」を発表することにした。皆の緊張が伝わってきた。「これらを鑑みて考えてみた結果、今年の新年の方針は、
『アジアNo.1から、テクノベート時代の世界No.1 MBAへ』だ。
もうすでにアジアNo.1の規模に達している。アジアという地理的な意味合いがオンラインでは意味がなくなってきている。衰退していく古いモデルに固執することなく、新しいテクノベート時代で世界No.1目指すことにした。今まで掲げてきた『アジアNo.1』という看板を全て『テクノベート時代の世界No.1』に掛け替えてほしい」と訴え、続けた。
「そのためにやるべきことは、たくさんある。まずはオンライン教育の覇者となるため、テクノロジーへ積極投資する。そこではAIやデータを徹底活用する。また、スマホのカジュアルな学びを推進するために、日英に対応した『グロービス学び放題』アプリの構築や世界次元で情報発信する英語メディアの強化も必要だろう。世界No.1になるためには、卒業生が活躍するための生態系づくりや、世界的なHUBキャンパスでのコミュニティ組成も重要だ。
テクノベート時代の世界No.1MBAを実現するため、2020年はこれまで以上にスピーディに、大胆に動いていきたい」と45分間の「新年の方針」スピーチを締めくくった。
2022年には、グロービス創業30周年を迎える。いよいよ世界No.1を目指すべくスピーディに大胆に歩んでいきたい。本年も何卒よろしくお願いしますm(--)m
2020年1月8日
堀義人