個人時間のリストラ〜水泳のジャパンマスターズで決めたこと 

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海の日の連休の最終日に、水泳のジャパンマスターズが開催された。今年は、大阪開催の年にあたるので、大阪門真市の、『なみはやドーム』まで行ってきた。マスターズは僕にとって二年連続の挑戦であった。

結果は、惨敗であった。そりゃあそうだ、練習時間をあまり確保できなかったから当然の結果である。これを機会に、これからの時間の使い方を抜本から考え直すことと した。

僕は、時間のやりくりにいつも頭を悩ませている。理由は簡単だ。多くのことをやり過ぎているからだ。妻が言うには、「盛りだくさん」状態なのである。

当然、本業のベンチャーキャピタル業務ビジネススクールなどは、多忙を極める。 ただ、それらの業務に関しては、もっとも優先順位が高いので、気にはならない。問題は、残された業務以外の個人の時間の中で、趣味、お付き合い、家族、などをやりくりする必要があることにある。

水泳のジャパンマスターズ参戦という目標に加えて、今年はトライアスロンに挑戦しようと考えていた。そのために、水泳の練習もクロール中心にして、多少なりとも長めの距離に慣れようと、今年のジャパンマスターズでは、初めて200M自由形 に挑戦したのだ(これが惨敗の理由の一つでもあった)。また、トライアスロンには、水泳以外に、ランとバイクがある。ランは10Kmでバイクは40kmである。 その準備のために、走りこみ、エアロバイクなどで足を鍛える必要があった。

それ以外にも囲碁のリーグ戦に毎四半期ごとに参戦している。昇段・降段がかかって いる真剣勝負のリーグ戦である。まだ初段のまま足踏み状態なので、これも早い時期に昇段したいと思っている。

当然、ビジネスをしているので、新聞も日経新聞、日経産業新聞、とファイナンシャ ルタイムズを毎日欠かさず読んでいる。雑誌も、日経ビジネス、BusinessWeek、 RedHerring(米系のハイテクベンチャー専門誌)などの雑誌は必ず読んでいる。さらには週間碁は隅から隅まで目を通しているし、テレビの囲碁講座は必ず録画している。

これらを僕は、「ルーチン」と称し、英語力を維持し、最近のビジネスやテクノロジー環境を理解し、さらには囲碁の棋力を維持するために、必ず行うことにしている。技術系の情報はこれでは足りないので、オンラインでも定期的にチェックしている。これらの「ルーチン」が出張などで溜まり始めると、大変なことになるので、時間を見つけては読み進めている。更に新聞・雑誌以外にも、大量に読書をする。

これに加えて、ファミリーと過ごす時間がある。男ばかり4人も子供がいるので家族との時間を疎かにするわけにはいかない。休みの日は、子供と一緒に、サッカーや野球をしたり、夜には、チェス、将棋、囲碁の相手をすることにしている。これを億劫がると、「父親失格」となる。

経営者の会合にも参加している。経済同友会では幹事を務め、新規事業創造委員会の 副委員長にも就任している。YEO(Young Entrepreneurs' Organization)は、創業会長である。最近は、YPO(Young Presidents' Organization)にも所属した。日本ベンチャーキャピタル協会の理事、さらに新設される日本プライベートエクイティ協会も理事となる定である。さらに、ダボス会議への参加や海外とのネットワーク などもある。最近では、本年7月1日から、ハーバード・ビジネス・スクール(HBS)のアルムナイ・ボードの理事を務めることになった。日本人としては二人目である。 今後3年間にわたり、年に3回ボストンに行くこととなる。

更に、このコラムの執筆も最低でも週に一回のペースで書いている。これに加えて最近では、GREEでも日記を書き始めた(三日坊主だが、結構楽しいのでハマッている)。

これでは、時間がいくらあっても足りないのだ。そこで、時間を有効活用するため に、工夫をする。

今回の大阪でのジャパンマスターズの参戦も、友人家族とともに、伊勢に行く計画に合わせるようにした。「どうせ、伊勢まで行くならば、愛知万博にも行こう」、となった。万博は夏休みや土日は、混みそうなので、子供の小学校を休ませて、金曜日に行くことにした。「長い目で見れば、一日休んで万博行くほうが、良い勉強 になる」という友達の助言もあった。

そして先週末の金曜日に愛知万博に行き、伊勢に入り。友人家族とゆったりと休日を過ごし、最終日の前夜に一人で近鉄特急の最終便で大阪に向かった。友人家族がいるので、子供達を伊勢に残しても安心である。家族旅行と友人とのお付き合いを両方とも実行し、さらにジャパンマスターズに参加できるのである。今年の計画は、うまく行ったと思っていた。

翌日、早めにジャパンマスターズの会場に向かった。『なみはやドーム』に朝8時に着いた。入場して、スイミングクラブのコーチに挨拶をした。今年はほとんど練習ができていないので、ちょっと恥ずかしい。ジャパンマスターズには、10年連続して出場して、ゆくゆくは年齢区分での世界記録を出したいと思っていた。だからこそ練習不足であっても、毎回参戦することにしていた。
(※参照コラム「水泳のジャパンマスターズ参戦」

レースが開始する前にメインプールで泳ぎ、レース前にもう一度アップのためにサブプールで泳いでレースに備えた。初めての種目なので、ペース配分などは検討がつかない。レース開始までの待ち時間に、「堀さんですか?」と声をかけてくる男性がいた。僕のコラムを読んでジャパンマスターズに参戦していることを知り、事前にメール交換をしていた人である。彼が、当日挨拶に来てくれたのであった。

自己紹介されて、メールの内容を思い出した。彼は、僕と同世代で、関西の公立大学で水泳をやっていたのである。彼の意識の中には、僕が関西国公立水泳大会で難なく優勝していた勇士の姿が、残っていたみたいである。レース前に、その当時の話を懐かしそうにしていた。その彼が見守る前で、僕の200M自由形のレースが始まった。

最初の100Mは順調にいったのだが、後半でバテバテ状態であった。結果は、無惨であった。僕の200M自由形は、彼が出場した400M自由形の200Mのラップタイムよりも8秒も遅い時間でしか泳げなかったのである。これは、屈辱である。彼に促されるようにスタジアムの横についているサブ・プールに向かい、疲れ果てた体を泳ぎながらほぐし、考えた。

「もういい加減、「盛りだくさん」に多くのことをやるのをやめて、自分の優先順位が高いものだけに、自分の時間を使おう。そうじゃないと、やることが全て中途半端 になってしまう。やるならば、しっかりとやりたい」、そう強く思った。

そこで、いわゆる個人の時間の使い方のリストラ。つまり、時間の「選択と集中」をすることにした。

先ず、自分が大会に出たり、発表の場を持ち、結果が出るものは限定することにし た。どうしても水泳と、囲碁と、執筆活動は続けたかった。そこで、この3つを選択し、時間を集中することにした。残念ながら、それ以外は止める、という選択をせざるを得なかった。リストラには痛みが伴うのである。

翌日からは、シリコンバレーへの出張である。出発前に成田空港から、トライアスロンを誘ってくれた友人宛に電話して、トライアスロン参戦を断念することを伝えた。 多くの方からは、「意気地なし」などといわれるかもしれないが、仕方が無い。いっぺんに多くのことはできないのである。他にも止めることをリストアップしていた。

機内では、大量に持ち込んだ雑誌(Business Week、RedHerringなど)や週間碁に目を通した。そして、一通りのルーチンワークを終えてから、テクノロジー系のビジネス書を読破して、コラム執筆にとりかかった。

こうした移動の時間を有効に使いながら、大切なことだけを選択し、集中して、時間を有効に使うこととした。

2005年7月19日
シリコンバレーに向かう飛行機の中にて
堀義人

 

京都大学工学部卒、ハーバード大学経営大学院修士課程修了(MBA)。住友商事株式会社を経て、1992年株式会社グロービス設立。1996年グロービス・キャピタル、1999年 エイパックス・グロービス・パートナーズ(現グロービス・キャピタル・パートナーズ)設立。2006年4月、グロービス経営大学院を開学。学長に就任する。若手起業家が集うYEO(Young Entrepreneur's Organization 現EO)日本初代会長、YEOアジア初代代表、世界経済フォーラム(WEF)が選んだNew Asian Leaders日本代表、米国ハーバード大学経営大学院アルムナイ・ボード(卒業生理事)等を歴任。現在、経済同友会幹事等を務める。2008年に日本版ダボス会議である「G1サミット」を創設。2011年3月大震災後に、復興支援プロジェクトKIBOWを立ち上げ、翌年一般財団法人KIBOWを組成し、理事長を務める。2013年6月より公益財団法人日本棋院理事。いばらき大使、水戸大使。著書に、『創造と変革の志士たちへ』(PHP研究所)、『吾人(ごじん)の任務』 (東洋経済新報社)、『人生の座標軸』(講談社)等がある。

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